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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 115

ジェムのパフォーマンスがあまりにも芝居がかっていて、ドルフは逆に冷めてしまったのだ。
何が幼い娘だ。
全部こいつの妄想ではないか馬鹿馬鹿しい。
ドルフは言う。
「お前、今回のクーデター、裏で関与してるんじゃないのか?」
「は?…………いやいやいや、何を言い出すんだい突然?僕がクーデターに関わっている?それは何か証拠があってそんな事を言っているのかい?確実な証拠も無いのに勝手な想像で物を言うのは止めてもらえないかね。非常に不愉快だよ」
「そうだな。これは俺の勝手な想像…だったが、今のお前の態度を見て確信に変わったよ…テメェ!なに企んでやがる!?」
「…フ…フフ…フフフ…フハハ…ハハハハハッ!!アハハハハハハハハハハッ!!!!アァーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ…ッ!!!!」
突然、ジェムは狂ったように笑い出した。
「な…何だお前…気でも違えたか?」
「ハァ…ハァ……お前だとぉ?貴様ぁ、一体誰に対して物を言ってる…?」
次の瞬間、ジェムは態度を一変させた。
「テメェ…!!」
「だからぁ、相手が誰なのかわきまえて口をきけと言ってるんだ。僕はヤヴズ・ジェムだぞ?ヤヴズ家の次期当主…いずれこの国の頂点に立つ男だ。覚えておけ。僕の一存で貴様なんかいつでも殺せるんだぞ…」
「とうとう本性を表しやがったな、このゲス野郎。だが口の効き方に気を付けた方が良いのはテメェの方じゃねえのか?テメェはどんなに偉くなろうが所詮は王家の臣下…俺はその王家をも凌ぐイシュマエル家の人間だぞ?」
「ハッ!解ってないなぁ…貴様、まさか学生時代に僕に助けられた恩を忘れた訳じゃあるまいなぁ?」
「…セイルの一件か…」
「ご名答ぉ〜♪」
ジェムはわざと挑発的に手を叩いて茶化すように言った。
「あの時僕が貴様を助けていなければ貴様は騎士学校を退学になり、騎士にもなれず一生を日陰で惨めに過ごす羽目になっていたろうよ。つまり今の貴様があるのは僕のお陰と言っても過言ではない。この理屈、解るよなぁ?」
「く…っ!!」
それを出されるとドルフは厳しかった。
彼は今、なぜあの時こんなヤツに借りを作ってしまったのだろうと激しく後悔していた。
だが今となってはもう遅い。
ドルフはジェムに頭を下げて言った。
「ジェム…俺も騎士だ。お前に助けてもらった恩はいつか別な形で必ず返す!そして俺は今回の件に関しては何と言われようともお前に協力はしない!さあ!早く帰ってくれ!」
「ハァ……お前なに勘違いしてんの?」
「は…?」
「僕はお前にお願いしてんじゃない。命令してんだよ。あ〜あ…ったく、せっかく僕が下手に出てやったんだからさぁ…その段階で快く了承してくれれば僕だってこんな真似しなくて済むんだよぉ?」
「ど…どういう事だ…!?」
「いやぁ、何の事は無い。お前が協力しなければ学生時代にお前がした事を世間に公表する…それだけだ」
「なにぃ!!?」
「ククク…イシュマエル家の御曹子、無実の級友を卑劣な罠に掛けて退学へ追い込む…いや実に面白いじゃないか。まあ別に君が気にする事は無いんじゃない?もう過去の話だし、罪に問えるような事でも無い。ただねぇ…世の中には法的制裁とは別に社会的制裁という物があるからねぇ…世間が君に向ける眼差しは少ぉ〜しだけ厳しい物になるかも知れないねぇ。いや、君にというよりイシュマエル家全体に対して…かな?」
「……」
ドルフは何も言わない。
彼の顔は真っ青になっており、小刻みに震えている。
ジェムは続ける。
「確か、お父様とお母様もご存知なかったんだっけ?いやぁ、もし知ったらどう思われるだろうねぇ?我が息子が何の落ち度も無い無実の同級生を卑劣な罠に…」
「も…もう止めてくれえぇぇ!!!!」
ドルフは大声で叫んで床に突っ伏した。
「あの頃の俺は世間の事なんて何一つ知らずに舞い上がってた馬鹿だったんだ!だからタルテバの汚い提案にも簡単に乗っちまった!だが今じゃあ心の底から反省してる!セイルにも本当に悪い事をしたと思ってるんだ!」
「ハッ!…タルテバの汚い提案?この期に及んで他人のせいか。お前本当にどうしようも無えクズだな」
ジェムはドルフを見下すと、その肩の上に片足を乗せた。
「…まあ良いや。それじゃあ今自分が何をすれば良いか解るよなぁ?イシュマエル・ドルフ君?」
「ああ…」
ドルフは静かに頷くと腰に下げていた剣の柄に手を掛けた。
ジェムはすかさず言う。
「あぁ、言っとくけど君の所業の全てを記した帳面を知り合いに渡してあって、もし僕の身に何かあったら全て世間に公表するようにと伝えてあるから…そこんとこよろしくね?」
「あ…あぁ…」
ドルフは脱力してその場にくずおれてすすり泣き始めた。
「おいおい泣くなよ。まるで僕が苛めてるみたいじゃん?…で、これで自分がすべき事は解ったろう?」
「わ…解った…ジェム…お前に協力して王都を…」
「違う。解りましたジェム様…だろうが。お前は今日から僕の臣下なんだからな」
「わ…解りました……ジェム…様…」
ドルフは悔し涙に泣き濡れながらジェムの前にひざまづいて臣下の礼を取った。
なんという事か…ジェムはあのドルフを脅迫によって屈伏させ、そして服従させてしまったのである。
元は自分で蒔いた種とはいえ、さすがに哀れなドルフであった。

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