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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 111

「そ…そんな…どうして…どうして今なんだよおおぉぉぉっ!!!?……うぐぅっ!!?」
 ドッタアァーンッ!!!!
「閣下ぁ〜っ!!?」
マリクシャーは突如として白眼を剥いて椅子ごと後ろへぶっ倒れた。
彼は小児てんかんが完治しておらず、今でも感情が高ぶるとこのように昏倒するのであった。

所変わって…
「フェラーハ・パサン!!貴様また街で酒を飲んで喧嘩したそうだな!?」
ここはイスカンダリア総督府隷下の兵士達が暮らす兵舎だ。
ここにセイルやアリーの級友パサンがいた。
「お言葉ですが中隊長殿、退勤後に何をしようと俺の勝手でしょう?」
「馬鹿者ぉ!!!我ら総督府の兵士はいついかなる時も市民の模範として振る舞わねばならぬのだ!!それを貴様は…!!」
「でも先に手を出したのは向こうですよ?」
「そーゆー問題ではない!!!だいたい貴様はいつもいつも問題ばっかり起こしやがって!!貴様の軍規違反は上官である私の査定にも影響…と、とにかく貴様が悪いのだ!!反省せんか馬鹿者がぁ!!」
「まあまあハディード中隊長殿、そんなに怒ると血圧上がりますよ?」
「き…貴っ様ぁ!!!上官をナメとるのかぁ!!?」
「そんな事ないですよ」

パサンは中隊長に怒られているのだが、全く堪えていないどころか、逆に軽くあしらっているようでさえあった。
唾を飛ばして怒鳴りまくっているパサンの上官…中隊長のハディードはまだ若く、パサンより10歳も上ではなさそうに見える。
彼は中級貴族で、まあ悪い人間ではないのだが、家柄だけが取り柄で、若くして中隊長の地位に就いた青年だった。
彼は自分が部下達からナメられているという事を良く自覚しており、その事を凄く気にしていた。

「う…嘘をつけ!!だいたい貴族ら兵隊は上官に対する礼儀がなっておらん!!てゆうかぶっちゃけお前ら俺の事ナメてるよね!?ねえ!?ねえ!?」
「……そんな事ないですよ」
「何だその一瞬の間はぁーっ!!!?もう怒った!!お前なんか上の方の知り合いに頼んで北方鎮台に飛ばしてやるんだからな!!?」
そこへ、一人の初老の騎士が現れて二人の間に割って入った。
「中隊長、どうかお怒りをお鎮めください」
「サラーム小隊長殿!」
その人物を見たパサンは自然と背筋を伸ばして直立不動の姿勢となる。
サラームと呼ばれたその老騎士は年齢に似合わずガッシリした体格であり、温和そうな表情の顔には2、3の古傷があり、いかにも歴戦の勇士といった様相であった。
彼は穏やかに、しかしハッキリとした口調で言う。
「パサン、またやらかしたな?本当に仕方の無いヤツだな、お前は…」
「はい、申し訳ありません。小隊長殿…」
ハディードは思った。
(何これ!?俺に対する時と態度違くね!?)
だがこのサラームを前にしては何も言えなかった。
無理も無い。
この小隊長サラームはかつて北方鎮台軍で蛮族討伐作戦において多大な功績を挙げ、それでイスカンダリア総督府軍に栄転して来たバリバリの現場叩き上げである。
ハディードのようなキャリア組は叩き上げに弱い。
(だって叩き上げってメンタル面とかマジでハンパねえし…ぶっちゃけ恐えぇ…)
ハディードがそんな事を考えているのを知ってか知らずか、サラームはハディードに向き直って言う。
「中隊長、私の部下の失態は私にも責任がある。申し訳ありませんでした。どうかこのパサンの処罰は私に任せていただけませんか?」
そう言うと彼は自分よりも遥かに年下で実力も経験も無い上官に頭を下げた。
「あぁ…いや、しょ…小隊長が責任を持つと言うのであれば…解った。彼の事は“今回も”任せる…」
「ありがとうございます…パサン、お前、重営倉3日だ」
「はい…」
サラームが言い渡した罰は、まあ妥当な物だった。
パサンは素直に営倉へと向かった。

 ピチョーン…
「…冷たっ!?」
天井から落ちた滴がパサンの顔に当たる。
ここは営倉の中。
営倉は軍規を破った兵士を短期間収容しておく懲罰房…つまり牢である。
居心地は当然ながら良くない。
何より人間何もさせてもらえないという状態ほど辛い事はこの世に無いのだと思い知らされる。
「ハァ…よく“営倉では一日が一年”って言うけど、あながち嘘じゃねえよなぁ…」
そこへ…
「おう、パサン。飯持って来てやったぞ」
「小隊長殿!?」
営倉の鉄扉の下の隙間から盆に乗せられた粗末な食事が差し出された。
「ありがとうございます!いただきます!」
「ハハハ…まあ食え。食いながら聞け」
「もぐもぐ…もういただいてます!」
「お前、喧嘩したの、カツアゲに遭った同期達の仇討ちのためだそうだな。聞いたよ」
「あぁ…聞いたんすか。いやぁ、なんか今イスカンダリアの街のチンピラ共の間で“役人狩り”とかいうのが流行ってるみたいで…」
「ハハハ…俺達ぁ嫌われ者だからな」
「笑い事じゃないっすよ。ヤツら“悪徳役人に天誅を下す”とかほざいて集団で襲いかかって来て金を奪う手口なんですが、一人でいる弱そうなヤツしか狙わねえんだから。とんだ天誅もあったもんだ。だいたい悪い事してるのは役人でも上の方の連中なのに…なんで真面目に仕事してる下っ端の俺らが狙われなくちゃならないんだ…」

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