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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 107


一方、執務室に戻ったサーラは様々な行政書類に目を通していた。
鎮台府には小さいが城下町が付随しており、その街の統治も鎮東将軍の仕事だ。
「フゥ…」
仕事が一段落したサーラは溜め息を一つ吐き、ここに赴任して来たばかりの頃の事を思い出す…。

街の人々や兵士達は彼女を大歓迎してくれた。
だが肝心の鎮台府の運営に携わる高官達…すなわち彼女の直属の部下達からは、あまり良い顔をされなかった。
それは仕方の無い事だった。
西南北の鎮台府が今でもそうであるように、鎮台府の長である将軍は単なる名誉称号であり、現地に行って直接統治するという事は普通しない。
現地には現地の“長”がおり、それなりの自立性を持ってやって来たのだ。
それがいきなり王都から王族が派遣されて来るとなれば良い気はしないだろう。
しかも相手は女だてらに騎士学校で剣を学んだサーラ王女…自分に期待されている“役割”を理解してお飾りに徹してくれるような人ではない。
事実その通り、サーラは着任するや否や鎮台軍の兵士達の生活環境の悪さや城下の廃れっぷりを厳しく指摘し、改善に乗り出した。
当然、高官達は抵抗する。
サーラは始めに彼らの懐柔をせねばならなかった。
彼女にとって幸いな事に、幹部の中でも比較的若い世代は彼女の考えに理解を示し、陰に日向に支援してくれた。
そもそもやっている事自体は正しいのだ。
それもサーラを後押ししてくれた。
彼女は支持者を少しずつ、確実に増やし、ひと月足らずで東方鎮台府をその手中に収めた。
最後まで彼女に恭順しなかった者達(もはや意地である)は追放した。
あるいは更に努力すれば味方に引き入れられたかも知れないが、そこまで極度に融通性の無い頑固者共だと、今後も問題を引き起こすに違いないし、彼らを懐柔する労力を考えたら、もっと有意義な事に力を費やした方が利口だ。
優柔不断のセイルと違い、そこら辺の線引きは割とハッキリするサーラであった。

最初、高官達を懐柔するに当たり、彼女は自分の身体を使う事もやむを得ないと考えていた。
だが、結局それはしなかった。
事が予想以上に上手く運んだというのもあるが、やはり今ひとつ決意が定められなかったためである。
そういう事をしようと考える度にセイルの顔が思い出されるのだ。
どうも自分はあの王家の一員でありながら意外と貞操観念が強かったらしい。
サーラは思いがけず自覚させられたのであった…。

「セイル君…どうしてるかなぁ…」
椅子の背もたれに身を預けてポツリとつぶやくサーラ。
あの卒業式の日の事が思い出される。
たった一度きりの交わり…。
サーラは思わずアソコが熱く疼くのを感じた。
目を閉じると、あの二人きりの教室の風景が蘇って来る。
彼女の右手は無意識の内に両脚の間へと…。

…と、その時!
「サ…サーラ様ぁっ!!!い…一大事でございますぅ〜!!」
ノックもそこそこに部下の一人が血相を変えて飛び込んで来た。
「な…何なんですかアナタ!!?いきなり失礼な…!!」
動揺したサーラは彼女には珍しく声を荒げる。
「もっ申し訳ありません!」
このサーラの厳しい叱責に部下は自分の短慮に気づき直ぐに平謝りをする。
そのお陰で、自分が自慰に耽ろうとしたのがばれずに内心ホッとするサーラ姫であった。
そして、落ち着きを取り戻してサーラは部下の用件を訊ねる。
「それで…何が起きたのですか?」
「い…今、魔信から入手した情報なのですが!!王都イルシャ・マディーナでク…クーデターがお…起きました!!」
「なっ何ですって!本当なの!」
王都でクーデター勃発という予想外の出来事にサーラも驚かずにはいられなかった。
王都クーデターの報を聞きサーラはセイルの顔が過ぎってしまう。
そして、愛しいセイルの無事を祈らずにはいられなかった。
(王都でクーデター!セイルくん、彼は王都衛士隊所属だったはずよね…無事でいて)
「サッサーラ姫様?」
クーデターの報に驚いたかと思えば、急に黙ってしまった主君のサーラに部下は何を言えば良いのか解らずと惑ってしまう。
しかし、サーラは直ぐに我に返ると報告の続きを訊く。
「思わず取り乱したわ…さあ、報告を続けなさい!」

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