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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 106

更に今回のクーデターはイルシャ王国内外に波紋を呼んだ。
無理もない東大陸最大の国家にして東方諸国の盟主であるイルシャ王国はここ三百年近く外敵に攻められ内戦等を経験せず平和と繁栄を謳歌してたから、王国内外で衝撃が走るのは無理もなかった。

一方、クーデターの張本人のヤヴズ・バムとブム兄弟はというと朝から美味そうな食事を食べながら、従弟ジェムを捕まえる方法を話し合っていた。

「時にバム、憎くっきジェムが見付からなかったんだな。不味いんだな」
「ブムは心配性だな〜もうジェムには何の力は無いんだな」
父ワムを失脚させた張本人のヤヴズ・ジェムが見付からない事にブムは苛立っていた。
「でも、奴の首はマジで父上の墓前に供えるべきなんだな!」
「ぶひひひ〜ブム。僕らは官軍なんだな。反逆者のジェムに賞金と地位を懸けたら直に捕らえる奴が来るんだな。それまで果報は寝て待つんだな〜」

兄バムの単純な作戦にブムはあっさり賛成するとバクバクと食事を豚のように食べ始める。
「流石はバムなんだな〜そうと決まったら腹ごしらえ何だな〜」
「ぶひひひ〜もっと褒めて欲しいんだな〜」
照れるバムにドヤ顔のブムは食べながら話しかける。
「もぐもぐ…飯を食ったら…もぐもぐ…王者の楽しみ…なんだな〜」
「ぶひひひひ〜当然なんだな〜ブム!僕らはイルシャ国王。つまり!酒池肉林は当たり前なんだな〜」
我が世のハルを謳歌するバムとブムは豚みたいな鳴き声で笑い出す。
「「ぶっひひひひひ〜〜〜〜〜〜」」
しかし、このバムとブムの会話を隣の部屋で一人の若者は聞き耳を立てながら、眉を潜め浮かない顔をしていた。
(クソ!!俗物共め!一体何のために武器を取って立ち上がったんだ!?自分達だけが美女美酒美食に溺れて楽しい思いをするためだったのか!?)
アリーは権力を握った途端に欲望を露わにして享楽に耽り出したバムとブムに失望していた。
彼は踵を返すと静かに自分の部屋へと戻って行った。

かつて何かの大臣の執務室だった部屋で、彼の趣味ではないが豪華な机と椅子があり、本棚には手に取って読んだ形跡の無い様々な分野の学術書が並んでいる。
アリーはここを自分の部屋としていた。
装飾は無駄に多いが座り心地も良い金細工の椅子に腰を下ろしてアリーはつぶやく。
「こうなったら僕一人だけでもやってやる…誰も泣かずに生きられる理想の国を作るために…!」
そして彼は羽ペンを手に取り、下書き用の藁半紙に新たな国の形をデザインし始めた。


さて、魔信(魔導通信)によってクーデターの報を伝え聞いた王国各地では…


‐イルシャ王国・東部国境地帯・東方鎮台府‐

「これらが今回の手入れで押収した禁止品ですか…まったく、よくこれだけの物を隠して持ち込もうなんて思ったものね」
ある倉庫の中、目の前に山と詰まれた木箱を前に、鎮東将軍イルシャ・サーラ第21王女は半ば驚き、半ば呆れ顔で言った。
側近の騎士が答える。
「はい、サーラ様。内訳は、2割が銃など武器類、3割が偽金類、残り5割はハシーシュ(大麻)など麻薬類です」
国境を通過する行商人や旅人に紛れて、国内へ禁止品を持ち込もうとする者は少なくない。
そういう物を入国前に絡め取るのも鎮台府の重要な役目であった。
「…いずれも国を乱す元です。いつものように銃火器類のみ接収し、残りは焼き捨てなさい」
「はっ!仰せの通りにいたします!」

二人の会話を聞いていた兵士達は小声で話し合う。
「どうして姫様は押収した鉄砲なんかを大事に取って置きなさるのかねえ?」
「まさか国崩しでも考えておいでじゃあるまい…」
「おい!お前達!無駄口を叩いてないでサッサと作業にかかれ!」
「「はっ!!」」
隊長に怒鳴られ、兵士達は慌てて作業に取り掛かる。
それを見たサーラは少し微笑んで言った。
「では、よろしく頼みましたよ」
そして彼女は自分の執務室のある鎮台府の本城へと戻って行った。

去り行くサーラの後ろ姿を見ていた一人の若い兵士がウットリとした表情でつぶやいた。
「姫様…相変わらず凛々しくてお美しいッス…」
それを先輩兵士が茶化す。
「ラビーウ、お前は相変わらず姫様にゾッコンだなぁ〜」
「せ…先輩!?」
ラビーウと呼ばれた若者はたちまち真っ赤になった。
別の兵士が言う。
「しかし姫様が鎮台に来られてから俺達下っ端の待遇も各段に改善されたし…本当に素晴らしい御方だ。王都の民達からも随分な人気だったそうだが…」
「それを妬まれてこんな地の果てみたいな所に飛ばされて来たんだろう?まったく…王族や貴族でも民想いの心優しい人物ほど中枢から離されていく…本当に今のイルシャ王国は腐ってるよ…」
それに対してラビーウは瞳を輝かせて言った。
「イルシャ王国なんかどーでも良いッス!お陰で俺ら毎日姫様のお顔を見れるッスから!」
「いや、そりゃお前は良いけどさ…」

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