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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 105

「いや、あれは本当に小さい頃の事だろう…」
「ほほう…それは興味ありますね。お二人は一体どういったご関係で…?」
アルトリアの疑問にミレルが答えた。
「坊ちゃまのご一家は今でこそ王都でお暮らしですが、最初はご両親ともども大旦那様のお屋敷に一緒に住んでおられたんですよ。それが、坊ちゃまが10歳の時に旦那様(オルハン)が働きを認められて王宮に御奉公する事が決まりまして…」
「そうだったのですか。それでミレル殿はウマル殿のお屋敷に残られた訳ですか」
「はい…記憶は無いのですが、私の母は坊ちゃまの乳母だったそうです」
「あぁ、するとお二人は乳兄妹(めのときょうだい)という訳ですね」
乳兄弟とは同じ乳で育った者同士の事で、その絆は実の兄弟より強いとさえ言われる。
「はい…ですが母は私達が乳離れした頃に病で命を落としてしまいました。運の悪い事に母は未亡人で身寄りが無く、私は天涯孤独の身の上になってしまいました。それを大旦那様が憐れんで引き取って育ててくださったんです。ですからセイル坊ちゃまとは10歳まで本当の姉弟のように育ったんですよ。てゆうか私、幼いころ坊ちゃまの事を弟だと勘違いしてましたし…」
「僕もミレルの事をお姉ちゃんだと思ってたよ」
「ふーむ…“兄妹”ではなく“姉弟”という所がお二人の関係性を暗示していますね…」
「大きなお世話だよ!」
「でも私よくイジメっ子や犬から坊ちゃまのこと守ってあげてましたよね」
「そ…それは…!!」
「あ!坊ちゃまったら赤くなった赤くなったぁ〜♪」
「もう…ミレルは相変わらずなんだから…」
そんな二人の仲睦まじいやり取りを見ていたアルトリアは一言。
「あの〜、もし良かったら私、今夜は別の部屋で寝ましょうか?」
「いや、いいよ!てゆーか今の話からその気遣いへは繋がらないだろ!」
「そ…そうですよ!私達そーいう関係じゃないですから!どーぞ遠慮なさらないでください!」
二人は真っ赤になって否定した。

その晩、三人は一つのベッドで川の字になって眠った。
「うぅ〜ん…セイル様ぁ…ご飯もう一杯ぃ…ムニャムニャ…」
「坊ちゃまぁ…変な所にお芋がありましゅぅ…ムニャムニャ…」
(ね…寝られんっ!!!!)
セイルは真ん中だった。
二人の寝間着姿の美少女に左右からサンドイッチ状態にされ、ふくよかな胸や柔らかいお腹や太ももの感触を感じながらセイルは眠りに…就ける訳がなかった。
けっきょく彼がようやく寝付けたのは明け方近くの事だった…。



さて、翌日。
バムとブムが王都でクーデターを起こしたという知らせはイルシャ王国中へと伝えられた。
イルシャ王国の国土は広大であり、王都から王国の東西南北の端まで早馬を飛ばしても辿り着くまでに一週間は掛かる。
だがクーデターの報は僅か一日でイルシャ王国全土を駆け巡った。
この驚異的な伝達速度は、王立学士院が長年の研究の末に開発した情報伝達システムを駆使したからに他ならなかった。

魔導通信…通称“魔信”と呼ばれるその情報網は数年前に各地の王家直轄地に配備されたばかりで、まだ試験運用の域を脱していない。
遠くに居る相手に音声や映像を送る魔術は古くから存在していたが、これは距離が遠くなればなるほど不鮮明・不正確になる。
もうだいぶ前の話になるが、王都郊外で行われていたセイル達の卒業試験が騎士学校に中継されていたが、あれは熟練した高位の魔導師を十数人ほど揃えていて初めて成せる業なのである。
どれだけの情報をどの地点へ送るか…これは相当な精神力を要する作業であり、恒常的に出来る物ではない。
そこで、送り手の魔力を増幅する人工的な魔導装置を使用し、その助けを借りて未熟な魔導師が一人でも遠くまで情報を飛ばせる技術を開発した。
また、受け手も情報を受け取り易いよう受信用の魔導装置を用意しておく。
魔導装置といっても厳めしい機械などではなく、巨大な魔法陣である。
これによって受信出来る地点は(魔法陣のある所に)限られるものの、かなり遠距離への情報送信が可能となった。
しかしさすがに広大なイルシャ王国の国土の果てまで情報を送るためには、幾つかの中継点を経ねばならない。
それでもこの通信網を使えば王国の端から端まで最短20〜30分ほどで情報を伝達する事が出来た。
このように非常に画期的なシステムなのだが、何せイルシャ王国はずっと平和だったため、今まで大した活躍の機会にも恵まれず、特に重要視もされていなかった。
それが皮肉にも今回のクーデター騒ぎで、一気に日の目を見る事となったのであった…。

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