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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 10

「誰だって良いだろうっ。あたしはロイって奴に様があるんだ。あたしは気が短いんだ!ロイって奴を出しな!」

女はふてぶてしく大声で叫ぶ。

(…………俺に、用?)

現場を遠くに眺め、様子を伺っていたロイは女の目的を探ってみる。
もちろん、初対面――面識などはなかった。

「オーガスト様は大事な客だ。それを貴様みたいな怪しい奴に会わせる訳ないだろうッ。船から降りればこの場は見逃してやるぜ」

女を囲んでいる船員達のリーダー格だろう、男は大海原を駆ける船から降りろなどという、無茶な命令をした。

思わず、笑ってしまいそうになりながら、ロイは思考を続ける。

予測するに密航者か。
さすがに出航から日が経ち、気が緩んでいたところを見つかってしまった――というところだろう。
ロイは半ば好奇心を満たすため、半ば予定よりも時間を食った航海への苛立ちを紛らわせるために、女とそれを取り囲む男たちの輪へと近付いていった。

ジリジリと少しずつ、距離を詰めていく男たちへ、刺す視線で威嚇する女。
近付き過ぎたのだろう、唐突に女と目が合ってしまった。
黒い――女性への形容としてはアレだが、実に男前な――双眸である。

「なっ…!」

ロイと目が合った瞬間…。

女の若干大きな口の端がクッと上がった。

女が浮かべたのは大胆不敵なまでの微笑み。

そして女は舞う様に動いた…。

掴みかかろうとしていた船員の一人がもんどり打ってロイの足元に倒れこんで来た。

その間…一秒も経っていない。

「このアマァァ!」

「ひん剥いてやるぜ!」

残った船員が一斉に女に飛び掛かってゆく。

がっしかし……………

「グッは!!」
「グホッオォォ!!」
「ギニャアアアアァァ!!!」

あっという間に屈強な大男の船員達は女に船壁へ思いっきり投げ飛ばされ目を回してしまった。

「ふん、海の男の癖にだらしないね。」

そう吐き捨てると、すでに興味を失ったのか、男たちから視線を外した。

その体捌き、見事というしかない。きっと、自分のガタのきた身体など十秒で物言わぬ肉塊に変えられてしまうだろう。

そう考えながら、ロイは頬を強張らせた。
なにせ、女(凶暴)が己と視線を交錯させたまま、一歩、また一歩と近づいて来るのだ。
蛇に睨まれた蛙の如く、ロイはその接近を硬直したまま、眺めるしかなかった。
小麦色の肌をした女はジロリとロイを上から下に眺めると言う。

「アンタ――ロイって奴のところへ案内しな。いまの見ただろ?」


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