ロイ――新世界を刻む者 59
「フッフッフッ…さ〜て、どう料理してくれようかしらぁ〜?」
「ひいぃ〜っ!!?」
その時、茂みがガサガサと音を立てて揺れた。
「え?…何か居るの?」
「そ…そうだよ!ボクが飛び込もうとしたら何かにぶつかって弾き飛ばされたんだ!」
シャングリラは茂みに向かって叫んだ。
「そこに居るのは誰!?」
すると…
「グルルルルル…」
「「…っ!!!?」」
低い唸り声を上げながら茂みを掻き分けて“それ”は姿を現した。
一方、ロイとデラは…
「…落ち着いたか?」
「ああ…済まん」
二人は川岸から少し離れた場所に腰を下ろして身を寄せ合っていた。
いや、身を寄せ合っているというよりはロイがデラに身を預けているといった所か…。
デラはロイを優しく包み込むように抱きかかえている。
自分より背も高く大柄なはずのロイが、今は何だか小さく感じられた。
「また情け無い所を見せてしまったな…」
「構わないさ…あんたも色々と目にして来たようだね、ロイ…」
“あんたも”という言葉にロイは、デラもまた自分と同じく“何か”を抱えて生きてきた“同類”である事を感じたが、もとより謎だらけのデラの事…今は深く探る気は無かった。
デラもデラでロイの過去をあれこれ詮索する気も無い。
二人に必要なのは“今”だけだったし、この距離感が心地良かった…。
「デラ…」
「ロイ…」
二人は互いに見つめ合い、唇を重ねようと徐々に顔を近付けていく……
…その時だった。
「キャアアァァァァ…ッ」
野営地の方から上がる悲鳴。
「…なぁ!今のって…!」
「ああ!…戻るぞ!」
どうやら感傷に浸っている場合ではなさそうだ。
二人は急いで野営地へと引き返した。
野営地に戻った二人を待っていたのは驚きの光景だった。
「な…何なんだコイツは…!?」
「あ…ロイ、デラ…」
「ご覧の通りです…」
シャングリラ、リュック、ラファエル、ミラ、それに女達の悲鳴を聞いてテントから出て来たゴッコ、ロベルト、アポリーも…皆“それ”から距離を取りつつ呆然と立ち尽くしていた。
“それ”は地面に置かれた鍋に頭を突っ込んで、シャングリラの作った焦げ付いたスープをガツガツと貪るように飲んでいた。
鷲の上半身に獅子の下半身、背には翼……そう、彼らの目の前に現れたのは紛れもなく“グリフォン”と呼ばれる幻獣に他ならなかった。
「……オーケー、解った。どういう状況だ?」
ロイの質問にリュックが答える。
「どうもこうも無いよぉ〜!いきなりソコの茂みから出て来たんだもん!」
デラは剣の柄に手を駆けつつ訊いた。
「襲って来た訳じゃあないんだな…?」
シャングリラが答える。
「…ええ、私達には見向きもしないで真っ直ぐスープに向かったわ。グリフォンは人を襲うような動物ではないって聞いてるし…たぶんスープの匂いに釣られて来ちゃったんだと思う…」