PiPi's World 投稿小説

ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 -1
 1
の最後へ

ロイ――新世界を刻む者 1


クーックーックーッ……

海鳥の群れが目の前を横切っていき、遥か遠くの水面へと着水していった。
これほどの数の海鳥がいるということは陸地が近いのだろう。
しかし、同じ種族なのだろうが、自分の見知った海鳥とは少し、身体の大きさや羽の紋様が違っている。

――まぁ、生き物については門外漢だけど。

そう、胸中でそっと呟くとロイは右手で首を絞めるように握ったいたラム酒の瓶を口元に持っていくと傾けた。
サトウキビを蒸留した独特の香りと酒気が口を、喉を、食道を駆け抜けていった。

「ふぅ……」

ペロリと、その血の気の薄い唇を舐めたロイは嘆息した。
自分がいま立つ船首甲板の向かう先へと視線を向ける。
しかし、いくら目を細めてみても水平線と雲しか見えなかった。
それでも、この先には確かに存在しているのだろう。

――『新世界』。

十二年前に発見された、未だ名もなき新大陸。
だから、人は『新世界』と呼んだ。
夢と希望に溢れた未知の世界だ、と。

「ふっ……くくくっ……」

唇からは自然と笑いが漏れた。
夢と希望――自分が忘れてしまった単語である。

――だが、そんな世界へと俺はいま、向かっている。

ロイは、ほんの二週間ほど前のことを思い出した。
それは、この長い旅路の始まりの日なのだと、ロイはまだ、知る由もない。



「――ロイ・オーガスト。召喚に応じ、参上いたしました」

ロイは深く、頭を垂れ、膝を付いた姿勢で言った。
彼が通されたのはチェスタット王国、王城グロリアスの玉座の間。
上座に座るは当然、現国王ウィルフレッドである。
齢六十を超えた老王であり、そして、国民が敬愛する智王であった。
かしずくロイへとウィルフレッドは言う。

「面を上げよ、オーガスト」

「はっ」

ロイは王の言葉に従い、姿勢はそのまま、首だけを動かして顔を見せた。

鈍い色の金髪を短く切り揃え、瞳は黄土色でアーモンド型。長く、太い眉が男らしさを讃え、顎筋も通っている。
しかし、肌色は悪く、特に唇などは血の気がない。
昔は美丈夫だったのだろう、との印象を与えていた。

そんな三十も半ばの男へとウィルフレッドは続ける。

「貴殿の製作した地図――もう、我が国土の三分の一は記しただろう?」

「恐れながら、この度のモノでチェスタットの半分ほどを測量し、図面に表しました」

「何と、それは本当か……?」

「はい。」

ウィルフレッド王はロイに自国の国土三割を作成したかと訊くと、ロイは淡々と今回の測量で国土の半分の地図を作成したのだと言う。
老王は歳のため、細まってしまった両目を大きく開き、驚いた。
地図作成は非常に緻密な計算と手間がかかり、高度な技術が必要とされる。また、天候や季節にも左右される為、一般的に思われているより、大層な手間と時間が掛かるのである。

「では、その地図を見せてみよ」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す