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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 7


「ほぇ〜……この人数が全員、乗れちゃうんですか?」

ラファエルの感嘆の声にロイは微笑みで肯定した。
現在、船着き場に集まっているのは百人と少しか。
ウィルフレッド王の依頼はどうやら、ロイだけではなかったようで、自分と同じ測量士然とした者の姿もチラホラといた。
しかし、王国お抱えの測量士は自分を含めて三人――うち二人は高齢で塾を持っていることもあり、新世界へと向かうのは自分だけのはずだから、きっと、地方貴族が派遣した測量士たちだろう。

「――おおっ、ロイ・オーガスト殿。お待ちしてましたぞ」

そんなことを思っていると、突如、背後から名を呼ばれた。
ロイはその声に応え、振り向く。
チラリと隣を見るとすでにラファエルは声主を視界に捉えていた。
もしかしたら、声が発せられるよりも先に気配に気付いたのかもしれない。

「ん?――ああ、ゴッゴ氏。貴公が今回の旅の司令者ですか?」

ロイは声主へと慇懃な態度で言う。
声主はニッコリと柔らかな笑みを浮かべた。
ブラウンの髪を綺麗に撫でつけた四十男である。
少し、肥えた身体を神父服に包んでおり、胸元には銀のロザリオが吊られていた。
一目で神官だと分かる。
しかも、大して信心深くはないロイが顔と名を知っているほどの神官だ。
王国最高位の教会、グレンギニー大聖堂の三十三司祭の一人であり、教皇庁の役人でもある。
爵位こそないが、男爵相当の権限と、それ以上の人望を持つ男――それが、このブレンダン・ゴッゴであった。

「いえいえ、私だけではありません。三十三司祭からも私以外に四名、新世界へと渡ります。布教は――望めないかもしれませんが、開拓者方に神の道を説く者は必要ですからね」

「それは、ご苦労なことです」

「苦労など……これも主のかせたもう、試練です」

そして、ブレンダンは頬を弛ませ、人当たりの良い笑みを浮かべた。

「あ、あの……ロイ、さん?」

その時、ロイの左袖が引っ張られた。
見るとラファエルが辺りを気にしながら、フルフルと振るえる瞳で上目遣いをしている。
ロイは一度、嘆息すると応えた。

「オーガストさんだ……。それで?」

「えっ、と――みんな、見ているんですけど……」

「……?」

ロイは首を傾げると周囲へと目をやる。
すると言われた通り、船着き場に集まった者たちの視線が集中していた。
だが、そう珍しいことではない。
先も言ったように王国には『正式な』測量士は三人しかいないし、この場に集められたのは測量隊のメンバーである。
自分の名前を知らないほうがどうかしているのだ。
そんな旨を簡単にラファエルに説明してやる。

――自画自賛のようで、あまり気分の良いものではなかった。

しかし、ラファエルは感嘆に瞳を輝かせて言った。

「へぇ……。ロイさんって有名人だったんですかぁー」

「オーガストさんだ。何度、言わせる?――それに、おまえの身近にもっと有名人がいるだろ?」

「へ?えと、それは……」

「ロイ殿?この、少年は?」

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