ロイ――新世界を刻む者 6
「はい…?」
「まあ、気にするな何時かは解る。だから今はロイの助けをするんだ。」
カレルが言った事をイマイチ理解出来なかったラファエル。
そんな弟子をカレルは温かく見つめた。
「解りました、先生!ロイさん、よろしくお願いします。」
改めてロイに挨拶するラファエル。
「――はぁ。カレル……まぁ、おまえには昔から借りがあるし、仕方がない。ピューラを頼んだぞ?行くぞ……ラファエル」
カレルとしばらくの間、視線を絡ませていたロイだったが、結局、諦めた様に別れを告げるとラファエルに向かってドアの方を顎でしゃくった。
「はい!ロイさん。あの……ラフィって呼んで下さっていいですよ?」
ラファエルは深くは考えすぎない性格なのだろう、嬉しそうに瞳を輝かせた。
だが、ロイは駆け寄るラファエルからそっと距離を取ると言う。
「オーガストさんだ!いいな、ラファエル?」
変わってはいない。
しかし、変わろうとしてはいるのだろう。
そんなロイを微笑ましげに見送るカレルだった。
「――で?ラファエルはなにができるんだ?飯炊きか?」
「ち、違いますよ!僕は一応、先生の弟子です――って、すでに知ってるでしょ?」
王都の繁華街を港へと進む、親子ほども歳の離れたロイとラファエル。
まぁ、実際のところラファエルは十六歳らしいがソレよりも二つ三つ、幼く見える。
それにクリクリとした瞳の所為もあり、どうしても実年齢よりも子供に見えて仕方がなかった。
「でも、おまえ……ハゲてないだろ?」
ロイは隣をトコトコと歩む少年の頭部をチラリと見ていった。
市街に出るためだろう、紫色のバンダナで耳を隠しており、どこからどう見ても色の黒いガキだ。
カレルの門下に何度か会ったことがあるが、皆、頭の毛を剃っていたが、ラファエルは違った。
「ハ、ハゲじゃないです!先生のは剃髪ですぅっ!」
すると、ラファエルは顔を真っ赤にして訂正してきた。
――知っているに決まっているだろうに。冗談がわからないのか、カレルたちが好きすぎるのだ、きっと。
そんな微妙な距離感を出しつつロイとラファエルは雑踏を掻い潜り港への道を歩き続けた。
港ではウィルフレッドが遣わした今回の旅の随行者達とそれを運ぶ中型船がロイの到着を待っている手筈になっていたのだ。