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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 57

「だ…大丈夫だっ!」
屈強な部類には入る両方の太腿。
その太腿を包むズボンの厚手の生地を…。
両手先の指でギシッと掴むロイ。

「たくよ…無理すんなよ、アタシがイッチョ見てくるから!そこで待ってろよ!」
ロイへの心配を隠すようにいつもねあっけらかんとした態度のデラ。

ロイに向かって片目を瞑ると…。
『なんて事ないさ…』
そんな表情で濁流に向けて足を踏み出してゆく。

「や…やめろ!デラ!」
その後ろ手をしっかりと掴むロイ。
鬼気迫る表情をしている。

「な…なんだよ…チョロッと渡って、直ぐに帰ってくるって」
ロイの形相に押され気味のデラ。
やや引きつった笑みを浮かべている。

「いいからっ!おまえまで逝くな!」
額に油汗を浮かせロイ。
背後からギュッとデラを抱きしめる。

デラの心臓がドクッと鳴った。
鳴らざる得ないくらいの熱い思いがロイの両腕から…胸板から伝わってくる。

「ロイ…」

いつもの攻撃的な猫科の瞳。
そのデラの瞳に女の。
女が生まれついて持っている暖かい光が灯る。

「アタシは…何処にも行かないよ」


がっしりと大地に仁王立ちしたデラ。

そのデラに背後から縋りつくように抱きついたロイにそっと声をかける。

厚かましいまで図太く。
ガサツなまで大胆なデラであった。
女性ならではのカンも鋭い方であった。
そのカンがこの男も自分と同じであると。
自分と同じ十字架を背負っていると告げていた。

スッと右手を上げ…。
自分の胴に回されたロイの手に重ねるデラ。

「大丈夫だ…おまえを置いて逝くものか」

独り言のように呟くその言葉。
この上なく優しい物であった。



川音の聞こえる野営地にて…。

「大丈夫かしらねぇ…あの二人」

焚き火にかけた鍋を掻き回しながらシャングリラ。
それを心配そうに見つめるミラにボソッと呟いた。
そのシャングリラの様子…どこか上の空といった感じだ。

「し…心配ないんじゃ…ないですか、デラさんも付いているし…それより…」

ミラの視線はやや茶色くなった、鍋の中身から離れない。

「だから心配なのよ…ん?、それより何よ?」

シャングリラの心配はデラとロイへの姥心であった。
そしてミラも何かを気に止めている事に気づいた。

「だ…大丈夫…なんですか…そのスープ。
なんか…焦げてるみたいですが」
ミラの心配はただ一点、シャングリラの作るスープにあるようであった。

しかもミラの言葉が終わる頃には何やら芳ばしい匂いまで漂い始めている。

「なっ!あっ!これは大人…そう大人の味付けにしたのよ」
あきらかな言い訳。
その証拠にそう言うか言わないうちにスープ鍋を火から降ろすシャングリラ。

「は…はぁ」
愛想笑いを浮かべるミラ。

「とか言ってぇ…料理はボクなみ〜」
代わりに近くにいたリュックが突っ込んできた。

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