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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 56


「大丈夫ですか!ロイさん!」

血相を変えてラファエルが駆け寄ってきた。

「おぉ!ラフィ!何か薬ないか!?」

依然…取り乱し続けるデラ。

「さ…酒だ…酒を…くれ」

苦しげに喘ぐロイ。

「なに言ってんだよ!」

デラの心配は至って普通の事だったが…。

いつの間にか近付いて来ていたゴッコが。
うずくまっているロイにラム酒の瓶を黙って差し出した。

「お…おい、司祭」

驚いた様にゴッコを見上げるデラ。
そんなデラを押し退け酒瓶を掴むロイ。

小刻みに震える指先で酒瓶のコルクを外すロイ。

「おい!酒なんか…」

まだ、ロイを止めようするデラ。
そのデラの肩に手をやるゴッコ。

振り返り。
なんで…?と言った顔でゴッコを見上げるデラ。

そんなデラを哀しげな瞳で見つめるゴッコ。
そして…ゆっくりと首を横に振る。

その間にロイはラム酒の瓶をあおり始めていた。

ング―ング―。

酒瓶を傾け…琥珀色の液体を喉に流し込んでゆくロイ。

心配そうに見つめるデラ。
そして。
ロイの全身の小刻みな震え。
その震えが幾分、治まってきた。

決して薄くはない胸板を激しく隆起させながら…。
その身を起こすロイ。

「お…おぃ…ロイ…」

そんなロイに弱々しいとも思える声をかけるデラ。

そんなデラに“大丈夫だ”と言わんばかりに、空いている方の手をヒラヒラを振るロイ。

そして…馬車の方にフラフラと歩いて行ってしまった。

「今の彼には…まだ酒の力が必要なようです」

心配げに見送るデラに優しく声をかけるゴッコ。
その声は深い憐れみに満ちていた。


多少、落ち着きを取り戻したロイ。
デラと二人、轟音の元へと向かっていた。

独りで行こうとしたロイにデラが強引についてきた形であった。

蒼白な顔をして黙々と歩き続けるロイ。

「大丈夫か?ロイ」

普段より遥かに神妙な面持ちのデラが肩を並べる。

「あぁ…」

前だけを見据えたロイ。
絞り出す様な声ではあるがその語彙はさっきよりも遥かにしっかりしている。

そして…。

ゴオォォォ――。

一歩進むごとに確実に轟音は大きくなっていた。
ロイとデラの眼前に広がっているのは…。

轟々と音を立ててうねり流れる茶色い濁流であった。

「渡れのるか!?これ…」

濁流を見つめるデラ。
黒く豊かな髪に覆われた後頭部を。
ガシガシと掻き乱している。

そして横に立つロイに向けて…。

「参ったなぁ…ロイ、ロ…ロイ!?」

振り向き笑いかけようとしたが…。

当のロイは。
さっきと同様に、蒼白の顔で小刻みに震えている。

「大丈夫か!?あっ?」

ロイの身体に触れようとするデラ。

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