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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 55


「まだ…私たちの知らない事はいっぱいあるわ」

そんな二人にシャングリラとラファエルが歩み寄ってきた。

「シャングリラ、ラフィ」

リュックがニコニコと二人を迎え入れる。
ミラも同様であった。

そんな若者たちを父親の眼差しで見つめるゴッコ。

そしてデラは。

みんなより少し離れた処で今まで踏破してきた道のりを見つめていた。

「これくらい離れれば大丈夫だろう」

そんなデラの背後からロイが静かに声をかけた。

「あぁ…」

ロイの言葉に心此処に在らずといった感じで答えるデラ。

「それに万が一、此処まで追って来ても…此処ならシャングリラの魔法で一気に焼き払う事も出来る」

彼方を見つめるデラの横顔。
その精悍な横顔にロイはぎこちなく笑いかけた。

「あぁ…そうだな」

ロイのその笑みに気づいたデラ。
口許にふてぶてしい笑みを浮かべ返した。

だが…それでもデラの中で燻る妙な胸騒ぎは収まった訳でなった。

そして、何故かそれは巨大食虫植物の群れに向けた物ではなった。


決してジェラルドたちの事を知って訳では無かった。
ただ、デラの戦士としての本能が…音もなく忍び寄る更なる危険に対し警鐘を鳴らしている様であった。



深樹の海原を抜けてからの初めて夜が明けた。

陽が登ってからは眼前に広がる荒れ地の測量作業となった。

今まで測量作業に携わっていたのは主にロイ、ロベルト、アポリーの三名であったが。

当面の距離が稼げるまではシャングリラ、ゴッコ、ラファエルも積極的にロイたちをサポートした。
デラに関して言えば本人は手伝っているつもりの様であった。

数日はこうして測量と開拓に明け暮れてロイたちは進んだ。

そして…。
ゴォォォォォ――!

ある程度、進んだ時にロイたちの耳に微かだが大地を揺るがす様な低い音が聞こえてきた。

それは特別な音ではない。

「おい…ロイ!あの音は…」

血相を変えたデラが測量の準備をしているロイの元にやって来た。

「ああ…」

デラの言葉に苦虫を噛み殺した様に応えるロイ。

“あなた!”
“パパ…”

沸き上がる過去から声はそう簡単に振りきれる物では無かった様だ。

みるみるロイの顔面が蒼白になってゆく。

「ハァ…ハァ…ハァ…」

荒い呼吸を繰り返しながらヘタリ込む様に。
大地に両膝をつくロイ。

「お!おい!ロイ!」

面食らってロイの傍らに寄り添うデラ。

「ハァ…ハァ…」

苦し気に両目を見開いたロイ。
脂汗を浮かべた顔を小刻みに震わせている。

「お…おい!しっかりしろ!」

珍しく狼狽えたデラがロイの背中に手をやる。
そして…。

「ラフィ!司祭!」

みんなの居る方に向けて声を荒げる。

「さ…酒…酒だ」

デラの叫びに割り込む、絞り出す様なロイの声。

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