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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 51



眼鏡の縁を指先で押さえたシャングリラ。
かなり真剣な眼差しだ。

その眼差しは枯れた巨大植物ではなく…その中心にそびえ立つ大木に向けられていた。

デラとラファエルはいつになく神妙な面持ちで周囲の警戒に余念がない。

「どうだ?…シャングリラ」

ロイもシャングリラの邪魔をしない様…遠慮がちに声をかける。

「やっぱり…オニオオボタンが巨大化した物に間違いわ…多分…その鍵を握るのはこの大木よ」

冷静沈着に答えるシャングリラ。
この辺は流石であった。

「この大木が…」

ロイは聳え立つ大木を仰ぎ見た。

大人十人がその周囲で手を広げても抱えきれないであろう太い幹が一直線に天空に向かって伸びている。
そして他の木々の天辺のあたりになってやっと太い枝を四方に広げている。

その見かけは人間には図り知る事の出来ない永い年月を生き抜いたような巨木であった。

「どのオニオオボタンも主幹をこの大木の方に伸ばしているわ」

シャングリラは眼鏡を外すとそのレンズを拭った。

「この大木がでっかい花を咲かせて…その花が動き回ってるって事か?」

デラが口を挟んできた。
到底…デラには理解出来ない様な話だったので無理もなかった。

「まぁ…凄く大雑把に言えばそんなトコかも」

シャングリラが困った様な笑みを浮かべた。
少なからず巨木がオニオオボタンの巨大化に何らかの影響を与えている。
これは揺るぎ様のない事実でありそうだが。
大きな疑問がひとつ残った。

何故…オニオオボタンが此処で大量に枯れているかだ。

「しかし何でこの場所でオニオオボタンが枯れているんだ?」

ロイがその疑問を口にした。

「これはあくまでも推測なんだけど…」

眉をひそめ話し出すシャングリラ。

「ここでオニオオボタンは休眠しているのではないかしら…」

シャングリラの言葉にその場にいる全員の顔が凍りついた。

その言葉通り…このオニオオボタンが休眠中で、もしそれが一斉に目を覚ましたら…。

「ね…寝てるだけ?」

「そうよ…ラフィ、寝てるだけ…」

「あははは…」

ラファエルが引きつった笑い浮かべながら乗っていた蔦の上からそっと降りた。

「じゃあ起きる前にサッサと燃やしちまおうぜ」

真剣な眼差しをロイに向けるデラ。
デラらしいと言えばデラらしい意見であった。

「いや…こんな処で大量に燃やすとなると大火になる恐れがある」

ロイは冷静にデラの意見を却下する。

「でも…この花共が一斉に襲ってきたらヒトタマリもないぞ」

それでも食らいつくデラ。
それだけみんなの事を真剣に考えている証拠であった。

「だから我々は急いで道を造る…そして先を急ぐ。
それが我々の仕事だ」

ロイは真剣な眼差しでデラを見つめた。

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