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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 46


苦し紛れのミノタウルス…大きくジャンプすると両手を組み振り上げる。

着地と同時に振り下ろす。

轟音が響き…砕けた地面が弾け飛ぶ。

しかし如何せん…ミノタウルスは動きに精彩を欠いていた。

なんなく避けるデラ。

人々がミノタウルス・ハンマーと呼ぶこの大技も当たらなければ意味はなかった。

「お返しだ!デラァァ・アタァック!」

宙高く飛び上がるデラ。
そのまま身体を逆海老に反り返る。
両手には剣を振り上げたままだ。

そして着地の勢いで剣を振り下ろす。

デラ・アタック…どう見てもミノタウルス・ハンマーの真似であった。

だが…黒い塊がボトッと落ちた。

その塊には角があった。

「フッ!ガァァァ!」

ひときわ大きな咆哮を残った口が上げる。

そして…顔の右半分を失ったミノタウルスが地響きを立てて後ろにばったりと倒れた。

「や…やった…やった!」

ハンマーを手に喜んで跳ね上がるラファエル。

デラは倒れたミノタウルスに近づく。
止めとばかりに心臓の辺りに剣を突き立てた。

ロイたちが新しい野営地の準備をし終えた頃だった。

「ロイ!この野郎!勝手に野営地変えやがって!」

デラの怒鳴り声が聞こえてきた。

木立の陰にデラ、ラファエル、シャングリラの姿が…。

三人は苦労して何かを引きずっている様だった。

「なんだ!?なにやってんだ?おまえ」

ロイが素っ頓狂な声を上げる。
自分でも気づかない変化がデラへの言葉に現れ始めていた。

「牛肉だ!牛肉!」

怒っているのか…喜んでいるのか判らないデラの声。

「なんとまぁ…」

「スゴっ!」

「きゃ!!」

ゴッコが言葉を失い、リュックが目を丸くし、サラが身を竦めた。

三人が引きずっているは間違いなくミノタウルスの死体であった。

こんな物を引きずってくるとは…ロイは呆れ果てていた。
大方デラが言い出した事だろう。

だいだい…。
ミノタウルス自体は倒せない相手ではないが…倒したミノタウルスを見て牛肉だ!牛肉だ!と騒げるのはロイが知る限りデラくらいのものであった。

「今夜はステーキが食えるぜ!」

そんなロイにデラはニカッと笑って見せた。


夜の帳が降りて…。

「ロイ…ちょっといいか?」

デラが測量器具の手入れをしているロイに近づいてきた。

瞳が妖しく光っている。

「なんだ…」

嫌な予感を感じつつもロイが短く答える。

ロイたちは知らなかったが…実は牛肉と化したミノタウルス。
ラファエルが食べたあのキノコを常食としていたのだ。

シャングリラを見て発情していたのはそのせいであった。

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