ロイ――新世界を刻む者 42
「ラファエルと二人でシャングリラの護衛に充たってくれないか」
ロイの言葉を聞いたラファエルがニッコリと微笑む。
そしてデラは…。
「やっとアタシの魅力が判った様だな…ロイ」
満面の笑みだった。
その笑みを苦い表情で見つめるロイ。
他のみんなはデラの魅力イコール強さと捉えた様であったが…。
ロイには意味深過ぎるデラの言葉であった。
「んん…司祭はリュックやミラと一緒に野営地に待機して貰えますか」
ロイは気を取り直す様にゴッコに告げた。
「そうですね…そうしましょう」
ゴッコが穏やかな微笑みで答える。
「我々も近くで測量していますので…もし何かあったら呼んで下さい。
すぐ駆けつけますから…」
「すぐ駆けつけるのはいいけど…すぐに矢は射るなよ」
デラが混ざってきた。
そんなデラを口をへの字にして睨むロイ。
デラはニヤニヤしながら昨夜のロイの様に人差し指で自分の頬の傷をトントンと叩いている。
更に猫の様な大きな瞳でバチリとウインクして見せた。
デラとシャングリラ、そしてラファエルはガヤガヤと騒ぎながら…昨日、巨大植物が出現した森の奥へ進み入って行った。
昨日は巨大植物に襲われたリュックも今日はだいぶ元気を取り戻してはいたが…。
リュックは木々の間に広がる青空を見上げていた。
「どうされました?」
にこやかなゴッコとその陰に隠れる様にしたミラが近づいてきた。
「いやね…マイヨをさ…こんな危険な森で放しちゃったけど大丈夫かなぁ…って思ってさ」
リュックは心配げに空を見上げ続けている。
「マイヨなら無事にシスターの元にもうすぐ着きますよ」
ゴッコはニッコリと微笑んで見せる。
「なんか本当に凄いんだね…おじさん」
リュックが目を丸くしてゴッコを見つめた。
「シスターのお陰ですよ…」
ゴッコが遠くを見る様に目を細める。
「ふ〜ん…」
リュックの目は巨大植物に襲われる前と同じ目になっている。
「で…でも…こ…此処は…大丈夫かなぁ」
ミラは巨大植物をかなり怖れている様であった。
「大丈夫だよ!ミラちゃん…ボクがヤァー!トリャーってやっつけてあげるよ!」
リュックが腰の短剣を抜くと剣を振るう様に振り回した。
「大丈夫かなぁ…リュックちゃんで…」
ミラはあくまでも不安そうだ。
「大丈夫だよ!ボクもデラみたいに戦うんだから!」
リュックの鼻息は何処までも荒い。
「ホントかなぁ〜」
やっとミラの顔にも笑みが浮かんだ。
「ホントだよ!」
リュックが唇を尖らす。
そんな二人の若い娘をゴッコは父親の様な微笑みで見つめていた。