ロイ――新世界を刻む者 37
幾つもの蔦を斬り落とされる巨大植物も苦し紛れだろうか…リュックの身体をより花弁の方へと引き込もうとしている。
「あ!あ…や…やだよぉ!」
締め付ける力も強いのか…リュックの服もビリビリに裂けてゆく。
「ラフィ!」
剣を振るいながらデラがラファエルの方にチラリといちべつを送る。
「は…はい!」
ラファエルがヨタヨタと立ち上がった。
「嬢ちゃんの手を掴め!」
「はい!」
ラファエルが両手でリュックの手を掴む。
一本の蔦がリュックの服の胸の辺りの生地をむしり取った。
「バカぁぁ!エッチィ!」
小ぶりの乳房が露にり…リュックの両頬が真っ赤になる。
「このぉぉ!ふざけんな!花!」
確かに花は花だが…。
デラが巨大植物に勇猛果敢に近づいて巨大な花弁を狙う。
だが…そこのガードは流石に堅い。
ビュッ!
一本の矢が後ろからデラの頬を掠めていった。
「このぉぉぉ!」
鬼の形相でデラが振り返ると…。
バツの悪そうな顔をしたロイが弓を構えていた。
「ちゃんと狙えよ!!」
デラが怒鳴りながらその鋭い眼差しを巨大植物へと戻す。
「す…すまん」
さすがにいつもの毒舌はなく素直に謝ってきた。
「…たく!ハッ…」
斬り掛かろうとしたデラ…不意に何かを思いついた様だ。
「ロイ!ゆっくりでいい!しっかり狙え!」
蔦をいなしながら怒鳴るデラ。
「あ…ああ!」
ロイが返事を返す。
「シャングリラ!ロイが放つ瞬間…その矢に火をつけろ!出来るな!」
「ええ!」
シャングリラの顔がパッと輝いた。
急造された炎の矢が今度はデラの身体から離れた処を飛んでゆく。
そして吸い込まれる様に巨大な花弁に突き刺さった。
これは効いている様だ。
グネグネとのた打つ巨大植物。
ドサッ!!
「きゃ!」
「うわぁ…!」
リュックが解放され…ラファエルと二人もんどり打って倒れこんだ。
「よし!ラフィ!嬢ちゃん連れて…みんなのトコまで下がってろ!」
「は…はい!」
剣を両手で持ち腰溜めに構えるデラ。
乱れた前髪の隙間から爛々と輝く目で巨大植物を睨みつけている。
「この花!花占いしてやるぜ!死ぬ、死なない…てなぁぁぁぁ!」
烈火の勢いで斬りかかるデラ。
その時だった。
巨大植物が胞子の様な…花粉の様な物を大量に撒き散らす。
「ぐっ!くそぉぉ!」
デラの動きが止まった。
その隙間に巨大植物は森の奥へと逃げ込んでいった。
まさか…自由に動けるとは。
これには流石のデラも呆然とするしかなかった。