ロイ――新世界を刻む者 34
少年らしからぬ逞しさでラファエルはシャングリラに腕枕をしていた。
確かに何度も突き上げ…シャングリラを悦楽へと導いたラファエルは立派な男以外の何者でもなかった。
「私ね…」
その腕の中…片方の頬をラファエルの胸に押しつけ甘えるシャングリラがいた。
「私ね…まだ魔法の勉強をしてた頃ね…十四歳の時かなぁ…一緒に魔法を勉強してた三歳年下の男の子がいたの…」
唐突に昔話を始めたシャングリラ。
ラファエルはそんなシャングリラを優しく見つめた。
十四歳のシャングリラはその男の子に淡い恋心を抱いた。
初恋だった。
その男の子もシャングリラの事をお姉ちゃんと呼び慕っていた。
二人の楽しい日々は続いた。
「でもね…その子…死んじゃたんだ…」
シャングリラの目尻がら一筋の涙が流れて落ちた。
「シャングリラさん…」
シャングリラを見つめるラファエルの目も涙に滲んでいた。
「ラフィには…ちゃんと話しておきたくって…」
涙を浮かべるシャングリラ…それでも精一杯の笑みを浮かべていた。
涙に滲む瞳でシャングリラの瞳をじっと覗き込むラファエル。
「お姉ちゃん…二人っきりの時はそう呼んでいい?」
目を潤ませながらも頑張って笑うラファエル…その声は擦れていた。
「ぅん………うん…」
顔をくしゃくしゃにして…ポロポロと涙をこぼすシャングリラ。
それでも必死になって微笑むと、何度も何度も頷いていた。
二人の笑顔…それはお互いに心からの笑顔であった。
―その頃…ゴッコは――
篭を抱えて歩くリュック…ゴッコはその直ぐ後ろを歩いていた。
篭の中にはシスター・アンとリュックが育て上げた鷹の中の一羽〈マイヨ〉が入っていた。
「でもさー、シャングリラとラフィって怪しくない?」
リュックは振り向きもしながいが…先程からしゃべりっぱしであった。
「そうですか?」
ゴッコは優しい父親の様な微笑みで相づちを打っている。
「ゴッコのおじさんも怪しいよぉ…シスターがさ…連絡のやり取りでは必ずゴッコのおじさんが役立ってくれるって…なんで?」
リュックは初めてクルリと振り向いた。
「そ…それは…その…何と言うか…宗教家同士の…そう!宗教家同士の心の結びつきです」
突然の事に流石のゴッコも動揺を隠せなかった。
「ふ〜ん」
にっと笑い意味深な眼差しでゴッコを見つめるリュック。
「ゴホン!さぁ…先を急ぎましょう」
ゴッコは何とか取り繕う顔でリュックを急かした。
「いいなあ〜ボクもロイと…シシシシッ」
リュックは右手を軽く握り口元にあてると…イタズラっ子の様に笑った。