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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 30


ついに深樹の海原の入り口までやってきた。
ここから先が本当の意味での『新世界』であった。

「いよいよだな…」

鬱蒼と茂る針葉樹の前で馬を止めたロイが感慨深げに呟く。

針葉樹の一本…一本は太く高くそびえ立っていた。
だがその密集度は意外に薄いものであった。

これなら大々的な伐採をしなくても馬車は進んで行けそうであった。


「ロベルト、アポリー、測量の準備をしてくれ。
ミラとリュックは野営の準備にかかってくれ」

まだ御世辞にも打ち解けたと言いがたい新入りの若者たちに明確な指示を与えるロイ。
どんな状況に置いても、ひとたび仕事となれば寡黙な程打ち込む。
それがこのロイと言う男であった。

「ねぇ?ロイ…私はちょっと森の中見てきてもいいかしら?」

手を後ろに組んだシャングリラがモジモジと身体を揺すって見せた。
好奇心が抑えきれないと言った様子だ。

「それが君の仕事だろ…構わんさ」

ロイは僅かに右の頬を歪ませて見せた。
本人としては笑っているつもりなのだろうか。

そしてロイはソワソワと自分を見ているラファエルに気づいた。

「おまえも一緒に行ってもいいぞ…ラファエル」

「は…はい!」

ロイの言葉にラファエルがニッコリと微笑んだ。

シャングリラとラファエルがこのところ妙に仲が良いのはさすがのロイも気がついていた。

そして…それ程気の効く性格ではないロイだが。
あえて邪魔をする程、野暮な性格でもなかった。

「アタシはどうする?」

シャングリラについて行く事も憚れるデラは明らかに暇を持て余していた。

「そうだな…自慢の剣で…」

「おう!」

ロイの言葉にデラの瞳がギラギラと輝く。
やっと、らしい仕事がきたそんな感じだった。

「馬車を通す道の枝でも払って来てくれ」

「枝払いだぁ!?」

顔をしかめるデラ。
今度は明確に笑うロイ。
だが…どこか人を食った様な笑みであった。

シャングリラとラファエルは手に手を取って…キャーキャー騒ぎながら西のやや茂みが深い方に向かった。

デラは気だるそうに剣を担いで中央方向に進み行った。

それらの背中を見つめていたロイ。
知らず知らずのうちに微笑んでいる自分に気づいた。

そんな自分…ロイは気まづそうに顔をしかめると自らも測量の準備に取り掛かった。

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