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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 29

“深樹の海原”
グロリアス・ノヴァの街より南に二日程下った所に位置する大森林地帯。
それが街の人々に深樹の海原と呼ばれる地帯であった。

「ふ〜ん…で、その深樹の海原に入って行った奴はいないって事か?」

馬に跨ったデラが馬車の御者を務めているロベルトに尋ねた。


「いえ…『新世界』が発見された当時は深樹の海原に進み入る開拓者もいたそうですが…誰一人として生きて帰らなかったそうです。
それ以来ですね…誰も深樹の海原までは進み入りませんでした」

若干生真面目な感じのする口髭を蓄えた若者は神妙な面持ちで答えた。

「まずはその深樹の海原を抜ける道を確保する」

ロイがデラの横に自分の馬を進めた。

「道は?そんな森ん中を馬車は通れんのか?」

デラがロイの方を顧みた。

「その道を造るのも仕事のうちだ」

当然の事の様にロイが言い放った。

「随分とまぁ〜」

デラの美しく強そうな顔にはアリアリと不満の色が浮き上がっている。

「やなら…戻ってもらって構わんが」

ロイは仏頂面で馬を進めた。

「チィ!」

デラが舌打ちをしながらその後姿を忌々しげに見つめる。
自分で選んだカードだ。
腹立たしい事だが従うしかなかった。

小高い丘の頂上でロイが馬を止めた。

「ふん!」

まだ鼻息の荒いデラがその横に並ぶとジロリとロイの横顔を睨みつける。

「この丘を下れば深樹の海原です」

同様に馬車を止めたロベルトが静かに告げた。

眼下に広がるのは一面の針葉樹。
遥か向こうの山の麓まで続いている…まさに緑の大海原であった。

「凄いはねぇ…」

いつの間にか馬車から降りたシャングリラがオペラグラスを手にうっとりした顔つきで感嘆の声を上げていた。

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