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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 23


「明日の出立まで…当修道院で御ゆるりとお過ごし下さい…さぁ此方へ」

シスター・アンは丁重に頭を下げると一同を奥の間へと招き入れた。

そして晩餐―――。

ローストしたガチョウの肉と肝臓。
黒トリュフをふんだんに使用したパスタ。
自家製のチーズ。
同じく自家製の葡萄酒。
そして焼きたてのライ麦パン。

修道院の晩餐としては贅沢過ぎる料理がテーブルに並んだ。


「修道院ってぇのは…随分といいもん食ってんだな」

またしても素直過ぎるデラの言葉だった。

「今宵は特別ですよ――えぇ―」

テーブルについたシスター・アンが柔らかな微笑みをデラに向けた。

「失礼しました…此方はデ・ラ・クルスさんです」

自分以外…名乗っていない事に気がついたブレンダンが申し訳なさそうにデラを紹介した。

「まぁ…」

デラの名前を聴いたシスター・アンの顔がパッと輝く。

「何とかって聖女に肖った訳じゃないぜ」

またか…と言った苦笑を浮かべながらデラがボソッと言った。

「わたくしはシャングリラと申します」

シャングリラは自らの声で自己紹介した。
シャングリラらしい細やか気遣いだった。

「よろしくお願いしますね…お優しいシャングリラさん」

シスター・アンはシャングリラの方にその顔を向けた。

「僕はラファエルです…ラフィって呼んで下さい」

「まぁ…可愛らしい天使ですこと」

シスター・アンの鈴の音の様な声にラファエルの両頬がみるみる赤くなってゆく。

「…!」

お優しいはずのシャングリラがテーブルの下でラファエルの足を蹴った。


その様子を敏感に感じ取ったシスター・アンが片手を口元に当てクスクスと笑っている。

「ロイ…ロイ・オーガスト。
測量士です」

そして、頃合いを見計らってロイが続いた。

「オーガスト殿…」

シスター・アンは知っていたのか…。
はたまた感じ取ったのか。
憐れみと慈悲のこもった瞳をロイに向ける。

ロイは心の中を覗き込まれている様な気がして…思わず視線を背けた。


シスター・アンもわきまえている。
それ以上はロイに干渉してくる事はしなかった。

そして当たり障りのない会話は進み。
一同は贅を尽くした晩餐を時間をかけて楽しんだ。


ブレンダン・ゴッゴが通された客間にて―――。

エストール修道院が所蔵していた歴史書にブレンダンが目を通している時だった。

「司祭…よろしいですか?」

客間の入り口に静かにシスター・アンが姿を現した。

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