ロイ――新世界を刻む者 22
銀色の修道服を身に纏ったこの彫刻の様な美女はシスター。
シスター・アンティータム。
この修道院で神に仕えているシスターであった。
「お待ちしておりましたよ…皆様」
シスター・アンティータムはその銀色の瞳を細め、ガラス細工の様に美しい顔に陽だまりの様に優しい笑みを浮かべた。
このアンティータム。
シスター・アンの瞳、眉毛は白に近い銀色。
そして頭巾の下隠れた頭髪も銀色。
それらは褐色の肌にはひときわ、きわめき立っていた。
ブレンダン・ゴッコが司祭という立場からだろうか、この隊の指揮官という立場からだろうか、一番に口を開いた。
「シスター……シスター・アンティータム。すでにお分かりのようですが、一応。我らは本国より派遣された測量隊です。隊付司祭のブレンダン・ゴッコです」
「――ッ?貴方が……ゴッコ司祭?三十三司祭の?」
アンは眉間にシワを作り、小さく首を傾げて言う。
その反応にロイは違和感を覚えた。
他の人間の様子を窺ってみるとおそらくだが、ゴッコだけは気付いたようだ。
「なにか?」
「いえ……失礼しました
……想像していたよりお若い声でしたので…」
シスター・アンは口元に手を当てると銀色の瞳を上弦の月の様に細めて小さく笑った。
「失礼ですが…もしや…」
シスター・アンの言葉にブレンダンがこの上なく優しげな口調で問いかけた。
ロイはブレンダンの背中を見つめる。
やはり、自分と同じ結論に至ったようだ。
「えぇ…わたくしの両目はとうに光りを失っております」
ロイとブレンダン以外にはあまりにも意表をつく告白を唐突にしたシスター・アン。
その顔は限りなく穏やかなモノだった。
「まぁ…」
シャングリラが気の毒げに顔をしかめる。
「そちらの方…その様な憐れみは無用ですよ」
シスター・アンはゆっくりとシャングリラの方に柔和な顔を向ける。
そして、その更なる言葉にシャングリラを始め…一同は驚きを隠せなかった。
「心の眼です…手に取る様に判りますよ」
シスター・アンはそう言って再び小さく笑った。