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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 21


港や、そこから伸びた通りに比べると中央広場は遥かに理路整然としている場所であった。

先程までは多々見うけられた物乞いや無頼の類をこの場所で目にする事はない。

この広場の一角に街の治安を守備する王国騎士団の宿舎がある。
その事こそが、その理由のひとつであった。

そして…その宿舎に守られる様にかの修道院は広場の中央に、圧倒的な存在感で建立されていた。

「凄いですねぇ…」

十数メートルの鐘楼には純銀の鐘がかかる。
天井の高い礼拝堂をラファエルは目を丸くして見上げた。

「ホントねぇ…」

「ああ…」

壁一面には宗教画のステンドグラス、その周りには神話の神々の石像。
その石像達に守られる様にそびえる三メートル近い丈の観音開きの扉。
シャングリラも、ロイですらもエストール修道院の神々しい雰囲気に圧倒されていた。

「しかし…何でこんなに古ぼけてんだ?」

デラが思ったままの疑問を口にした。


確かに『新世界』の発見の時から考えるとエストール修道院には歴史の重みがあり過ぎた。

「かつては王国の地にあった物をこの地にて再構築したんですよ」

ゴッゴ司祭がニッコリとデラの疑問に答えた。

「ふぅ〜ん…随分とまぁ…手間と金のかかる事を…」

デラの言葉はあくまでも素直だった。
素直ゆえに核心を突いている。

そんなデラの言葉を聴きながらゴッゴ司祭は自分の胸の前で小さく十字をきっていた。

ギィィィィ―――。

芸術品の様な飾りのついた巨大な扉が重厚な音を立てて開いた。

シャングリラとラファエルに微かな緊張が走り。

デラは自然と身構える。

「お待ちしておりました…ゴッゴ司祭」

ガラス細工の様に繊細な声が礼拝堂の中から聞こえてきた。


「失礼しますよ…シスター」

柔和な笑みを浮かべたゴッゴ司祭が礼拝堂に進み入る。

後に続いたラファエルが…。
シャングリラが…。
デラが…。
そしてロイまでもが思わず息を飲んだ。

天井近くまで彩られたステンドグラス。
そのステンドグラスを通して、まばゆい陽の光が幾筋もの線の様に差し込んでいる。

その光を浴びて立つ姿はまるで彫刻の様であった。

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