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ロイ――新世界を刻む者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ロイ――新世界を刻む者 18

デラが暇を持て余してる頃。
「ふう〜ラム酒にも飽きたな。
偶には芳醇な葡萄酒が飲みたいな。
でも、芳醇で質の良い葡萄酒は庶民には高いんだよな。」


「もうすぐ『新世界』だな…」

手持ち無沙汰になったデラがロイの側によって来た。

「ああ…」

ボンヤリと海を眺めていたロイが僅かながら微笑みをデラに向ける。

「しかし…司祭も言っていたがデ・ラ・クルスってのは変わった名だな、本名か?」

「仇名だ…こいつのせいさ…」

デラが自分の胸元のクロスをキラキラと振り、笑ってみせた。
この女でもこんな表情をするのかと思える様な可愛らしい笑顔だった。


“本名は?”

そう聞きそうになる言葉をロイは酒と一緒に流し込んだ。
あえて仇名を名乗っている。
それなりの訳がある事なのだろう。
それ以上、詮索するのは野暮な事だった。

「で?あんたは何で地図なんか作ってんだ?金がいいのか?」

さり気無く話題を摩り替えたデラ…黒い髪を海からの風にたなびかせている。

「金じゃないさ…」

小さく笑って答えるロイ。
だが、みるみるその精悍な顔が蒼白になってゆく。

“パパ…パパ…”
“あなた!”

ロイの心を縛りつける過去からの声だった。

「ロイ!おいロイ!」

デラの声でロイは現実の世界に戻ってきた。

「大丈夫か?あんた…顔色悪いぞ」

デラが心配した様子でロイの顔を覗き込む。

「ああ…大丈夫だ…」

搾り出す様なロイの声だった。

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