中出し帝国 9
「痛たッ!!」
その少年にゲンコツを与えた。
「ふざけんのも大概にしなさいよアンタ!勝手にそうやってくたびれんのも個人の自由だけどね!ここ一体誰が掃除すると思ってんのよ!うちのメイドに遺体処理なんかさせんですかい己は!?」
「あぅぅ…ご、ゴメンなさい。」
「分かればよろしい。」
まさに突貫的な論理で叩いたルルは、再び外へ出ようとする。
「…ど、何処に行っちゃうの?」
「アンタの鎖を解けるものを探しに行くの。ちょっとそこで待ってなさい。」
「…あ、でもこれ自分で巻きつけたやつだから、そんなことしなくてもすぐに取れるよ!えいっ!」
突然、地下牢から出ようとするルルの背後から、鉄を切るような鈍い音が響いたと思われた瞬間、今度は服が破ける音が耳に響いた。
「え……?」
少年は、ルルに振り返る暇さえも与えずに疾風のごとき速さでルルの服をナイフで切り刻んだ。
ルルは、少年の巧みな動作に圧倒され、姿勢を崩し倒れ込もうとしたところで抱き抱えられる。
「えっ!?」
突然服を切られたせいもあるが、その少年の顔つきを再確認してみると……人が変わっていた。
大人しそうにくすんでいた赤の両目から、狂気をおぼつかせるほど開かれた両目へ。
顔は先程の貧相な面構えから、上機嫌な面へと変わっている。
ルルは瞬時に確信した。
(この子も、乖離性人格障害なのね。)
乖離性人格障害とは、ストレスやトラウマなどが原因で、自分自信の人格が破壊されそうになった場合、自信の人格を守るために他の人格を生み出す者の事を言う。
レストリア帝国に仕える女性も、数名はそのような障害を抱えていたので、ルルは名称と内容くらいは知っていたのだ。
乱暴に服を脱ぎ捨てる少年。おそらくは、ルルを犯そうとしているのだろう。
「待って!名前ぐらい教えなさいよ!」
性器をあらわにした少年に、ルルは突発的に叫んだ。
「…何だと?」
少年はルルをキッと睨み、いぶかしげに尋ねた。
「…だってそうでしょ?交わろうって時に(私が犯されようとしてるんだけど)お互い何も知らないなんて後味悪いじゃない!?……私はルル。貴方は?」
少年は、ルルから目を逸らすと、返答する。
「………。そうだな。俺はクラウ。クラウ・ソル・スォー・ファウストだ。」
「…………は?」
ルルはあっけらかんと呆け、頭の中を整理する。
(……ちょっと待って。この子の言う事が正しいなら、私はファウストの第3王子にヤられようとしてるってこと!?つーかっ!何でそんな大層な奴をレーセが知ってんのよ!?)
考えが深まる事に比例して、頭の中がごたごたになってゆくルル。