中出し帝国 64
その様子を呆然と眺めていたイリスだったが、ふと我に帰った。
顔に白い化粧を施したレーセが、こちらを眺めていたからである。
年の頃は近いであろうが、まだ人間としても女としても発展途上のイリスと比べ、レーセは成熟した女の色気を持っていた。
男の精を誘い貪る魅力……その片鱗は、昔から備わっていたようである。
「どうしたの? 大丈夫?」
硬直していたイリスは、レーセの言葉で身体の自由を取り戻した。
止めどなく流れていた涙も、いつの間にか乾いて目元に赤く跡を残している。
「い、いや、その、わたし……い、イリス……」
イリスはやはり動揺していた。名前などを聞かれていた訳でもなく、また名乗るつもりもなかった。
直面してしまった恐怖、そして目の当たりにした行為に、頭が混乱状態にあったのだ。
座り込んで瞳を泳がせるイリスに、レーセが微笑みを見せた。
レーセは艶のある身体を揺らしながら、イリスに歩み寄る。
「イリスちゃんって言うのね……私はレーセ。怖かった?」
レーセは優しく語り掛けながらしゃがみこみ、座り込んだイリスを抱き締めた。
「…ひっく…うわぁぁぁぁッ!」
押さえていた何かが弾けたような気がした。
心から溢れ出したものが、頬まで垂らす。
母のような包容力、そしてそれを引き立たせる安心感が、そこにあったからかもしれない。
ひとしきり泣き終わると、静かな嗚咽を漏らしながらレーセと向き合う。
「ごッ…ごめんなさい。…その…嫌じゃなかったですか?」
「いいえ。そんなこと無いですよ。」
ニッコリと笑った。男の体液の臭いはむんむんとしていたが、イリスはこれを気にしようともしなかった。母のような愛情を感じていたためだろう。
「…あ…あの……」
「なぁに?」
もじもじすると、目をきょろきょろと動かす。
「…そ…その………」
口から出したい言葉はあるが、どうやらそれを拒んでいるのかもしれない。
「…えっとぉ…私、貴女が隠れられそうな場所知ってるけど、案内してあげようかな?」
レーセは、イリスが1番言いたそうな言葉を代弁したが、首を縦には振ろうとはしなかった。
「ちっ…違うんです!……そのぉ…1人だけじゃ恐いから、い…一緒に………………しま…せんか?。」
「一緒にするって…大丈夫?初めては辛いよ。」