中出し帝国 46
顔を上げたシエラの表情が、驚きながらもパッと明るさを取り戻す。
「そ、それでメアは今何処に? 無事なのですかっ?!」
「ま、まだ報告待ちの段階よ。早いうちに結果は分かるでしょうけど……」
かなりの剣幕でまくし立てるシエラを、何とか制すルル。
シエラは「失礼、」と頭を垂れ、椅子に座り直した。
ルルはまた1つ咳払いをすると、顎に手を遣り、落ち着きを取り戻すように尋ねた。
「メアって人の事は今は待つとして……貴女はこれからどうするの?」
シエラは目をキョトンとした。
「…む?昨日言わなかっただろうか。あの骸の仮面をつけた者達に今すぐ会いたいんだが。」
ルルも目をキョトンとするが、呆気には取られなかったようだ。
「…だから、それだけはやめときなさいって。幾つ命があっても足りないわよ!」
シエラは腕を組む。
「…しかし、ルル殿は昨日確かに『従えている』とおっしゃっていたはずだが?」
「うっ…いや、形式上そうなるのかもしれないけど、アイツらお父様に服従を誓っているから…。」
言葉を濁す。その思いは、ルル本人にすら完全には把握できてはいないかのような口ぶりだった。
しかし、シエラは椅子から立ち上がりルルの両手を囲むように掴むと、目を光らせた。
「ならば!ルル殿がお父上に頼み込んでくれないだろうか!?」
「……こらこら待ちなさいよ。確かにアイツらは性別男だと思うけどね。…残酷よ?今じゃ、みんな逃げ出したり人殺したりとかはしなくなったから、余りそうは見えないかもしれないけど。昔なんてほんと酷かったんだから。」
シエラは、一旦椅子に座り直す。それは武士としての心構えか。
もしくは目の前で、二人の男が切り刻まられ血や臓器が吹き出したにも関わらず、つかの間にその男達が、男達のモノが無くなっていたのを思い返したからかもしれない。
「…その、酷かった…とは?」
シエラは恐る恐る尋ねてみた。
「ここ、地下牢あるんだけどね。そこの1番奥には、ある特別な部屋があんの。」
ルルは、遠い日を思い浮かべるように言葉を並べる。
「ふむ、その部屋に彼らがいるのですか?」
首を静かに横に振った。
「違うわ。過去、彼らがやってた‘業’ならあるけど。…そこで拷問してたの。昔、ここの城から逃げだそうと試みた女性を全員ね。」
シエラは顔をしかめる。そこには、先程までの感情は失せ消えているだろう。