中出し帝国 37
父親についての関係を鑑みていたルルは、足を止めて閉まっているドアをノックする。
昨日の記憶が正しければ、ここにあのエルフの女性がいるはず。
「……………誰ですか?」
一呼吸置いた後、彼女はそう尋ねた。ルルはドア越しに答える。
「ルル。ルル・エス・フェン・レストリア…って言えば分かるかしら?」
「…………そうですか。私を笑いに来たのですね。さぞご気分も宜しい事でしょう。…貴女がた人間が罵りあざけていた者達の長が、こうして捕まり、野蛮な男に忌み物にされたのですから!」
恨みのこもった言葉が述べられる。
そう思われても致し方ないのかもしれない。人間側は、昔からどの帝国にも属さないエルフの存在を差別し、冒涜し、または迫害しているのだから。
「違うわ。私は、貴女とお話に来ただけよ。……このドア、開けても良いかしら?」
「…何を企んでいるのでしょう?今の私から、拷問にかけてまで聞き出す事は何一つ無いはずですが。」
冷たく話し続けるリズレア。余程、疑心を持たれているらしかった。
「何も企んでなんかいないわよ。…ん〜まぁ、そんな簡単に信じてくれる訳ないか。キリがなさそうだから、ドアの鍵外すわね。」
「…………。」
ルルはドアノブの鍵を開ける為、鍵穴に鍵を差し込む。
「…よろしいのですか?」
「…え?」
質問が分からず、聞き返したルル。質問は続く。
「声と気配。そして風の流れから判断して、貴女は小柄で一人。貴女の周りには誰もいない。……そんな貴女がそのドアを開ければ、私が貴女の首を閉める恐れがあると、わざわざ警告してあげているのです。……よろしいのですか?そのドアを開けてしまっても。」
「あぁなるほど、よろしいのよ。わざわざ敵に自分の手の内を教えるんだもの。…本当は、そんなことする気はないんでしょう?」
鍵を時計回りに動かす。
鍵が開くと、ルルは躊躇いもなくそのドアを開けた。
そこには、昨日よりもやつれてぐったりとしたリズレアが、ベッドに座ってルルを睨んでいた。
その目は確かに暗かったが、昨日と同じ意思の強さを宿らせているのは分かった。
「…………。」
リズレアは何も言わない。