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ダンジョン王の日記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ダンジョン王の日記 36

「まったく、貴方という人はいつもいつもいつも、人の迷惑になる事しかできないのですね」

美しく整った顔に栗色のロングヘアを靡かせた姫将軍は質素なドレスを着ていた。相変わらずの美人である。
その長い髪はまだ濡れていて、入浴中に呼び出されたのかもしれない。今はその美しい顔も眉間にシワがよっていて、不機嫌さを隠してはいなかった。
「久しぶりの対話だと言うのに連れないな。私はお前の国を何度も救った英雄じゃないか。ほら、疫病が流行ったとき特効薬を作ってやったろう?」

「特効薬?病人一人を治すのに、健康な人間二人を薬の材料にしてしまうアレがですか?冗談も大概にしなさい。あなたは優秀な魔術師ですが、その行動はいつだってどこか間抜けで、本末転倒な結果になる」

「失敬だな。私は頼まれたから薬を作っただけなのに」
「貴方は犠牲を出し過ぎるのです。で?今日はなんの用があってわざわざ死にに来たのですか?今我が国の魔法学者が総出で貴方の魔法の逆探知を試みています。首を洗って待ってなさい」
「用?ああ、えっとなんだ……特にはないぞ?」

鏡の前で呆れ顔を通り越して侮蔑の眼差しを向ける姫。
まだ姫将軍が子供だったころ、私は彼女に魔法の初歩を教えてやったことがある。
あの時は私に尊敬の眼差しを向けていたのに、今はまるでゴキブリでも見るようなあの視線。年月とは残酷である。
ふと、急に姫将軍は真面目な顔をして私の目を見つめてきた
場の雰囲気が変わり、思わずたじろぐ私。
「・・・・・・どうしてあなたは」
ぽつりと、姫将軍が言葉を漏らした。
「あなたはどうして、そうやって自分本位な行動しか出来ないのですか?昔はあんなに人から好かれる、素晴らしい人だったのに」
いや、だって、人を助けるより人を魔物にするほうが百倍楽しいし。
「そう言うお前は、今も昔も他人のためにしか行動しないのだな」
場当たり的に言い返すと、姫将軍が息をのむのが聞こえた。姫が何言い返そうとする。
しかし丁度その時、私の酒酔いによる吐き気が限界を迎えてしまった。堪え切れず、魔鏡に向かって嘔吐してしまう。
姫の鏡には地獄絵図が映し出されたことだろう。鏡の向こうから姫の乙女らしからぬ悲鳴が響き、それで通信は切れてしまった。
うん。酔ったまま魔法なんて使うもんじゃない。以後気をつけることにしよう。

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