5大聖龍とその女達 97
「大丈夫だアレス、例え敵の洗脳にかかっていたとしても、お主の幼なじみだ。これは我の勘だが、たぶん2人はアレスにそう酷い事はしないはずだ」
そうだ、こんな所で弱気になっている場合じゃない。
俺たちがこうしている間にもどんどん2人の体を蝕んでいっているのに。
あの巨人をこの手で倒せないのは悔しいが、今はマリーとエリアを魔物ウルゥ達の戦いに巻き込まれないようにしないとな。
「あ、あぁ・・・ありがとうラムサ。おかげで少し楽になった」
「よい、お主のサポートにまわれないのは残念じゃが、決して無理はするな。まだケガが治ったわけじゃないんじゃからな」
「あぁ、分かってる。お前も気をつけろよ」
アレスとラムサは互いの拳と拳を合わせ、健闘を誓う。
自分の拳よりも一回り小さいが、それでもラムサの気持ちが深々と伝わってきた。
体は至って普通の女の子かもしれないが、心は立派な一人の戦士だと、そう思えた。
それから3人はあの首なし巨人にリベンジを果たすべく立ち上がった。
できればじっくり作戦を練りたいところであったが、魔物ウルゥの怒りがすさまじく、とてもゆっくりしている余裕はなかったのだ。
作戦としては魔物ウルゥが巨人の注意を引いてる間に、アレスが洗脳されたエリアとマリーを押さえる。
その間にラムサは魔物ウルゥの手綱を取りながら、巨人の一部となっている女性を救出。
残った部分を魔物ウルゥが処分する。そういう流れだ。
作戦と呼ぶにはあまりに稚拙なものだったが、状況だけに贅沢は言っていられない。
アレスは今度は負けないと固く心に誓いながら、ついにあの緑の首なし巨人と対峙した。
「うおおぉッ!!くだばりやがれェェェッ!?」
「!?」
「た、たわけっ!?よさんかウルゥッ!」
怒りにとらわれた魔物ウルゥが先手必勝とばかりに巨大な火球を投げつける。
巨人の不意をつけたのは僥倖だったが、あんなものが使ったらこの森まで焼いてしまう。
ラムサはあわてて止めようとするもすでに手遅れ。
これで敵ごとパーティ全滅かと思われたその時!
「聖なる盾よ、邪悪な力より我を守りたまえ!」
バキンッ!
エリアが突然前に出たかと思うと、すばやく印と呪文を唱えて投げつけられた火球を当たる直前に霧散させた。
「よ、よかっ・・・ぶッ!?」
パーティ全滅の危機を回避し、アレスは安堵のため息をつこうとして危うく鼻血を噴き出しそうになった。
なぜなら。巨人を守ったエリアとそれに追従するマリーはどういうわけかボロボロの布切れをまとっただけの全裸に近い格好をしていたのだ。