5大聖龍とその女達 85
急に現実に引き戻され、アレスはあわててエリアにお礼を言う。そんなアレスの態度にいぶかしがるエリア。
「アレスちゃん、どうしたの?何か考えてた?」
「う!?あ、いや、その・・・」
痛いところをつかれ、思わず答えに窮するアレス。
その様子にエリアの目つきがさらに険しくなる。
もうこうなればしらばっくれることはできない。
アレスは観念して素直に白状することにした。
「あー、いや、な。エリアが前にオレに告白したことがみんなにバレたときのことを思い出してたんだ」
「ふふ、それはずいぶんと懐かしい思い出ね」
エリアは一瞬虚をつかれたような顔をするとうれしそうに微笑んだ。
「ホント、懐かしいわぁ。
あの時はてっきり私を選んでくれるとばかり思っていたのに、マリーちゃんやウルゥちゃんからも告白されてて・・・。
しかもすぐに答えを出してくれるかと思えば、返事保留で待つこと数年・・・いったいいつになったら答えを出してくれるのかしらね?」
「うっ(汗)す、すまんが答えはまだ先延ばしさせてくれ」
エリアのさりげない突っ込みに、オレは冷や汗をだらだらかきながら弁解した。
エリアも答えを求めていたわけではなく、不満そうな顔をすぐに破顔させて笑い出した。
「くすくす・・・冗談よ。いたずらしごめんね?」
「お、おいおい。その手の冗談はやめてくれよ、心臓にわりぃ・・・」
心底ホッとした様子で安堵のため息をつくアレス。
その様子はボアライダーと一騎打ちしたときよりも疲労しているように見えた。
「うふふ、ごめんなさい。アレスちゃんたら、あれからずうっと答えを出してくれないものだから、ちょっと意地悪したくなって」
「う。それについては悪いと思っているよ。
でも今のオレにはその告白に返事をすることはできないんだ。
あの時もそう言っただろ?」
そう。アレスには人を魔物に変える暗黒大帝、ゾーマを倒すという目的がある。
もちろん志半ばで死ぬつもりはないが、相手が相手だ。
告白を受けて『はい、いいですよ』と言うことはできない。
それはアレスなりの優しさであり、決意の重さでもあった。
「わかってる。だからこうして一緒に旅をしているんでしょ?」
その言葉にアレスは苦笑を浮かべるしかない。
確かにそれもあるが、今の目的はウルゥに寄生した魔物を退治するためだ。
それを知られるだけでも問題だが、もしヤツのご機嫌取りとしてHしていることを知れたら、どうなるかわかったもんじゃない。
(・・・絶対にみんなには知られないようにしないとな。
出ないとオレの命が危ない・・・!)
「ん?どうかした?」
「いやっ、何でもねえよっ。それより早く先を急ごうぜ!」
アレスは己の抱える秘密を絶対に守ろうと心の中で誓いながら、あわただしく森の先へと進んでいくのであった。