5大聖龍とその女達 75
ウルゥは愛しい男を両手両足でしっかりと抱きしめ、今まで秘めてきた思いのたけを告げる。
「アレスさん・・・大好きです。愛しています。これからも・・・誰よりもずっと」
「う、ウルゥ・・・」
幸福そうにつぶやくウルゥに対し、アレスは何とも複雑そうな表情を浮かべた。
彼女が自分を好きになってくれたことはうれしい。
しかし自分はウルゥを守るために子供を生みたがっている魔物の要求に応えているだけに過ぎない。
そんなアレスを見て、ウルゥは誤解したのであろう。
彼女は苦笑しながらこう言った。
「いいんですよ、アレスさん。これは私からの一方的な告白です。
最終的にアレスさんが誰を選ぼうと、私はかまいません。
ただ・・・私がアレスさんを好きなことだけは、許してください・・・ね?」
「う、ウルゥ・・・」
アレスはウルゥにその身を預けながら、ウルゥの気持ちに対する歓喜と良心の呵責の間で揺れ動いていた。
その頃ラムサ達はというと、ケレキ村を歩き回っていた。
当初は真面目にこの近辺の探索と聖龍探しをしていたが、今は観光気分でいろいろな店を回っている。
クルカ村をあまり出たことがないマリーとエリアの二人は大はしゃぎ、ラムサに至っては店に並んでいる商品や飾りを見るたびに、目を輝かせていた。
「なあ、あれは何だ?こっちの食べ物は?」
物珍しそうに辺りを見回すラムサ。
いつもなら冷静に事を運ぶラムサも今となってはただの子供。
無理もない、つい最近まで山篭りをしていた少女にとって、街は未知の領域。
マリーやエリアもそんなラムサを見て、頬がこぼれる。
「ラムサちゃん、そんなに慌てなくても大丈夫よ。
「そうだぜ、時間はたっぷりあるんだ、ゆっくり回ろうぜ」
ちなみに3人の所持金はというと、今日の宿代を差し引いても大丈夫なくらい持っている。
まあ先にアレスが宿代を払ったが、それでも十分な額だ。
「なあ、これは買ってもいいのか?」
ラムサが指を刺しているのは、りんご飴のようだ。
「ええ、いいわよ」
「本当か!?よし、オヤジ一つくれ」
あいよと店のオヤジはラムサにりんご飴をあげ、エリアが代金を払う。
りんご飴を受け取ったラムサはリンゴを覆うアメごとリンゴにかぶりつく。
リンゴの酸味とアメの甘さがあいまって、これがまたおいしい。
ずっと山の中で暮らしてきたラムサには初めての体験だった。
「うむっ、うまいっ♪」
そう言いながら再びにりんご飴にかぶりつくラムサ。
その様子からはとても人外の存在には見えない。
年相応の子供のように見える。胸についたでっかい肉が不釣合いだが。