5大聖龍とその女達 76
「おうおう、そんなにうまそうに食ってくれるたぁ、アメ屋冥利に尽きるねぇ。
お嬢ちゃん、もう1コ食うかい?」
「むぐ!?い、いいのか?!」
「おうっ。お嬢ちゃんかわいいからな。サービスでおまけしてやらぁっ」
アメ屋のオヤジから差し出されたにりんご飴をひったくるように取ると、ラムサは夢中になって2個目のアメをなめしゃぶる。
まるでこのアメは自分のものだと主張するかのように。
「ら、ラムサちゃんっ!すみません、連れが失礼しまして」
「いやいやいいってことよ。
それよりお嬢ちゃん方、妙な格好をしているが、どこから来たんだい?」
その言葉にマリーがピクリと反応する。
勢いとは言え、メイド服なんてかわいい服を着ていることを不審がられているような、そんな気持ちになったのだ。
無論、アメ屋のオヤジはめずらしい格好だと言っているだけで、悪意なんてあるわけがない。
「クルカ村からです。この村へは王都に向かう補給のために立ち寄りました」
「へえ?王都ってことは・・・あそこで一旗あげようってのかい?」
「あら、おわかりになります?」
ゾーマを倒しになんて言えないので、エリアは当たりさわりのない言葉を返したが、オヤジにはお見通しだったらしい。
もっとも今はゾーマを倒す前に獅子身中の虫を退治するほうが先決なのだが。
何も知らないエリアたちの手前、今日は純粋に観光を楽しもうと思っていたラムサはこれ幸いとウルゥを治療できるキーパーソンの事を聞こうと試みた。
もちろん両手にはゲットしたりんご飴をしっかり握り締めながら。
「ところでオヤジ、一ついいか?」
「ん?何だ嬢ちゃん?」
「このあたりで聖龍の話は聞かないか?」
突然ラムサは店のオヤジに何かを聞き出していた。
マリーとエリアはよく分からず、黙って聞いている。
「聖龍?聖龍っていやぁこの辺じゃメルディアだな」
「メルディア?…聖龍の書だな」
「ほう、よく知ってるじゃねぇか嬢ちゃん。最近じゃ聖龍のことなんて誰も話さないからな。俺がガキの頃はよく親にメルディア様のように偉くなれるよう勉強しろってよく言われたぜ」
オヤジはガハハと面白おかしく話す。
「それで、どこにいるかは分からないか?」
「どこって言われてもな〜、俺が知ってるのはここから北東にあるキッサス湖にいるって聞いたことはあるが、あそこはやめとけ。湖に行くには森を抜けなきゃいけないんだが、そこが迷いの森でよ、ここ最近は湖に行ったって話は聞かねぇな」