5大聖龍とその女達 64
「く、くそっ。言いたいこと言って消えやがって・・・!」
「しかしマズいな。
魔物に寄生されたウルゥがついてくるとなると、いろいろ厄介だぞ?」
「わかってる!!でも、一体どうすれば・・・!?」
「う・・・ん・・・?」
そんな中、ウルゥが最悪のタイミングで目を覚ました。
「あ、れ?……わたし、確か……家、に……」
ウルゥは目をショボショボさせながら、辺りを見回す。
「大丈夫か、ウルゥ?」
「う、う〜ん……ひゃあっ!!」
突然、奇声を上げるウルゥ。
ウルゥは今アレスの胸の中にいる、つまり抱かれているのだ。
ウルゥは頬を赤らめて、アレスからばっと離れた。
「ご、ごごごめんね、アレス君。わたしったら、抱きついて……」
「い、いや……」
アレスとウルゥは二人して頬を赤らめる。
そんな二人を面白くなさそうにラムサは見ていた。
「おい、ウルゥ!何をしにきた、我とアレスには緊急の用がある。用がないなら、とっとと帰れ!」
ラムサは腕を組んでウルゥに言い放つ。
その眼光はいつもふざけた目ではなく、真剣だった。
(おい、何もそこまで言うことないだろう)
(うるさい、これくらい言わんと聞かんだろ)
「ね、ねぇ…アレス君、緊急の用って、やっぱりゾーマを倒しにいくの?」
「あ、い、いや、それは…」
本当はウルゥの身体を治す術を探す旅に行くとはとてもじゃないが言えない。
ゾーマを倒すのもその後だから、遠からず外れているとも言えない。
そんな中、均衡を開いたのはラムサだった。
「そうだ、我とアレスは兼ねてから今日この村を経つことを計画していた。このままじっとしていても世界は待ってくれんからな。今更嫌だと言っても無駄だ。のうアレス?」
「あ、ああ……そういう訳だ、すまないが家にかえ……
「わたしも連れてって!!」
突然、ウルゥが大声で言う。
ラムさもアレスもあっけに取られたような表情だ。
「アレス君、わたしお店の手伝いしながら、魔法の勉強してるんだよ」
「ああ、知ってる」
アレスは村を散歩していたとき、偶然ウルゥの働いている店の前に通りかかった。
その時ウルゥが店の裏で魔法の練習を見たことがある。
「い、今はエリアに習いながら治癒魔法習ってるんだぁ」
「知ってる」
これはエリアから聞いた。
ウルゥは秘密にしてって言っていたらしいが、エリアはたまに抜けていることがある。
「わ、わたし……こ、この前、近くの山で、モンスターを……」
「それも知ってる」
これも偶然だが、山に食材を採りに行ったときにウルゥがモンスターに襲われていた所を目撃した。