5大聖龍とその女達 52
プライドを傷つけられ、刃物と化した右手で今にも切りかかりそうなラムサ。
それに対し、魔物ウルゥは殺されてはたまらないとばかりに降参の意を示す。
「いやいや、言い過ぎた。謝るから許してくれ。
いくらオレが魔物とは言え、ベースは人間なんだ。
アンタに本気で来られたら勝ち目はないよ。
それにオレとしては条件さえ飲んでくれれば、この肉体を持ち主に返してやってもいい」
「条件、だと・・・!?」
アッサリ引くどころか、こちらの要求まで飲もうとするその態度に、アレスはそう言い返すのが精一杯であった。
「言ったろ?オレは種族を維持するために、おまえの子を孕みたいのさ。
それもできるだけ多く、な」
ギリッ・・・!
その言葉にラムサが怒りを漂わせ、前に出る。
殺るつもりだ。
アレスはラムサを懸命になだめながら、魔物ウルゥに反論する。
「バカを言うな!
いくら何でも、女の寝込みを襲うようなマネがオレにできるか!」
「そこは心配することはない。
この身体の持ち主も、おまえとつがいになりたいと願っている。
それに別に今すぐやれって訳でもない。
やってくれるなら、そこのお嬢さんを孕ませてからでもかまわない。
要するに孕ませてくれるなら、妾でも正妻でもかまわないってこった」
その言葉にラムサの怒りは少し治まるものの、今度はアレスの怒りが燃え上がる。
あまりに持ち主の意思を無視した言いようが気に食わなかったのだ。
「別に気に入らないのなら、それでもいい。
オレはこの身体を完全に乗っ取って、魔王なり何なり強いつがいを探しに行くだけだからな」
「・・・くっ!」
確かに魔物の行動理念は獣のそれに近い。
巣食う術がない以上、ここで断れば他の強い男の子供を産もうとするだろう。
人間ウルゥのためにも、そんなマネはさせられなかった。
「・・・1つ条件がある」
「何だ?」
「オマエの望みは強い子供を産むことだろう?
その条件を満たすようにしてやるから・・・ウルゥに身体を返せ」
「アレス、貴様・・・!魔物の言いなりになるつもりか!?」
「黙ってろ、ラムサ!」
それはアレスの譲れない条件の提示であった。
もちろん、いつまでもウルゥに汚らわしい魔物をいつまでも寄生させておくつもりはない。
問題は魔物を引っぺがすまで、何としても魔物ウルゥを自分の管理下に置いておかねばならないことだ。