5大聖龍とその女達 49
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その後、しばらくぶりに家に戻ったアレスは食事を済ませた後、ある場所へと向かった。
ちなみにラムサは妻としてアレスの家に泊まろうとしたのだが。
それを断固として認めないエリアとマリーに拒まれ、今はエリアのお世話になっているはずだ。
外に出ると、魔物を撃退した祝勝会でもやっているのか、酒場のある方角からかすかな光と騒ぎ声が聞こえてきた。
あの様子だと明日の朝まで騒いでいそうだ。
アレスは1つ苦笑すると、酒場に背を向けて歩き出す。
向かう場所は村はずれ。両親の眠る村の共同墓地であった。
「・・・ただいま。父さん、母さん」
両親の墓にやってきたアレスはいつものように両親に挨拶を交わす。
深夜の村はずれと言うこともあり、アレスの声は静まり返った墓地によく響いた。
「前に言ってたとおり、強くなろうと『試練の山』に行ってきたんだけどさ。
この剣と一緒にとんでもないヤツがついてきちまったんだよ」
そしてアレスは語り始める。
最後にここに来てから体験したこと、起こったことを全て。
それは幼くして両親を亡くしたアレスの、大切な習慣であった。
自分はしっかり生きている。両親みたいになるために日夜がんばっている。
それは死んだ両親を安心させるための報告でもあり、尊敬する両親のようになろうとするアレスの誓いの確認でもあった。
「・・・でさ。そのボアライダーの乗ってたイノシシってヤツがまた大きくて・・・さ、」
しかしアレスたちが魔物を撃退した話をしたところで、急にそのトーンが落ちてきた。
おそらくウルゥのことでも思い出しているのだろう。
そして全てを話し終えると、アレスは何か考えるかのように黙りこくった。
そしてその目に何か決意の炎をともらせると、アレスはその決意を両親に伝えた。
「・・・父さん、母さん。オレ、今までさんざん考えたんだけど・・・。
やっぱり村を出て行くことにするよ」
それは以前から考えていたこと。
今までゾーマを倒す、みんなを守ると言い続けてきたが、ついにそれを実行に移すときが来たのだ。
「実は前々から考えていたことなんだ。
ここ最近、魔物たちの活動は活発になる一方だし。
今日に至っては、バカでかいイノシシに乗ったボアライダーなんて大物が出てきた。
たぶん、放っておけば暴れる魔物たちの規模はもっと大きくなっていくんだと思う。
だから、行くよ。これ以上事態が悪くならないうちに。
・・・大丈夫だよ、父さんたちのおかげで村のみんなも強くなったし・・・。
きっとオレがゾーマを倒すまでは持ちこたえてくれる」
それは単に信頼から来る言葉などではない。
旅立つことへの不安、苦楽をともにした仲間を失うかもしれない恐怖を打ち払うための言葉でもあった。
「村を出る前に、せめて父さんたちには伝えておきたくて、さ。