5大聖龍とその女達 44
「ぐっ・・・!?」
ボアライダー渾身の攻撃を避けきれず、アレスは派手に吹っ飛ばされた。
アレスは地面を転がりながら受身を取ってダメージを必死に軽減する。
「「「「アレス(ちゃん・さん)ッ!」」」」
思わぬ事態に、ラムサ・エリア・マリー・ウルゥは目の色を変えて吹き飛ばされたアレスの元に向かう。
途中、何体かの魔物が道をふさいだが、恋する乙女(1名をのぞく)の力のすさまじきこと。
あっという間に倒してアレスの元に駆け寄る。
「アレスっ!?このバカモノ!油断しおって!!」
「うっ・・・く」
「アレスちゃん、大丈夫ッ!?」
「ウルゥッ!早くアレスに回復魔法をッ!」
「は、はいっ!!」
ウルゥが回復をしている間、エリアはアレスの容態を確認する。
ボアライダーのイノシシの牙にやられたのか、左手にひどい傷があるものの、他は大したことはない。
意識もハッキリあるようだ。
「す・・・すまんっ、ちょっとばかし油断した・・・!」
アレスは意識をしっかりさせようと、頭を振りながら幼馴染たちに謝罪する。
ふと見れば、そこには再び突撃体勢をとったボアライダーが立ちふさがっていた。
「ヤロー・・・バカにしやがって・・・!」
絶好のチャンスを攻めてこなかったのは、おそらくラムサたちの反撃を恐れてのことだろうが、アレスにはそれが気に入らない。
ゾーマを倒そうとする自分の弱さに、腹が立つ。
「熱くなるな、アレス!」
「そんな状態で突っ込んでも死ぬだけよ!?
頭を冷やして!」
「・・・くっ!」
ラムサとエリアの助言に、アレスは頭に上りかけた血を静め、自分を落ち着かせる。
(・・・そうだ、落ち着け。確かにヤツは強い。
でも・・・倒せないレベルじゃない!)
今までやってきた厳しい修行の数々を思い出し、自信と冷静さを取り戻していく。
それと同時進行で目の前の強敵、ボアライダーを倒す手段を講じていく。
「・・・・・・」
それを見ていたボアライダーは、しばらく地面を引っかいていたが・・・。
「うおぉぉおおっ!!」
「ブオアァァアアッ!!」
アレスとボアライダーは声高らかに吠えると、ほぼ同時に突っ込んだ!
「アレス・ビジョン!」
かけ声とともにアレスは4人に増殖する。
先ほど数体の魔物を一瞬で切り裂いた、アレスビジョンによる分身斬撃だ。
それを見たボアライダーは懐から何かを取り出すと、4人のアレスのうちの1体目がけて撃ち放った!