5大聖龍とその女達 39
猟師たち弓部隊が先制攻撃の準備をしている間、魔物たちは興奮気味にこちらの様子をうかがっていた。
普通の村ではありえない、統制の取れた動きに本能が危険を察知したのかもしれない。
アレスは弓の準備が整ったのを確認すると、森の主にまたがる魔物に向かって警告する。
「おまえたちー!ここから先は人間のテリトリーだ!
これ以上入ってくるなら、こっちも容赦しねえぞー!?」
「・・・・・・・・・」
イノシシにまたがる小さな魔物は返事をすることなく、背中の棍棒を手に取り、突撃の合図を魔物に送る。
頭がいるようだから、言葉が通じるかと思ったが、甘い考えだったようだ。
「みんな、頼むッ!」
アレスは村人に合図を出すと同時に地面に伏せると、その背後から弓・魔法の混成チームが一斉に攻撃を開始した。
バカ正直に突っ込んできた魔物は、それを避けることもせずに突っ込み、まともに攻撃を食らう。
予想以上に激しい攻撃に魔物たちの前衛の何割かはあっという間に倒される。
だが連中の全身は止まらない。
それどころか、血で興奮してますます凶暴さに磨きがかかる。
先制攻撃が終わったところを見計らい、今度はアレスたち接近戦チームが柵から飛び出し追撃をかける。
これがこの村における魔物の撃退必勝戦術である。
とは言え、これだけの魔物を相手に、一体どれだけ戦えるか・・・。
アレスは内心の不安を打ち払うように、鬨(とき)の声を上げて魔物の群れに突っ込んでいくのだった。
アレスは正面にいるイノシシに向かって剣を振りかざす。
身体の大きさを見れば、アレスの2倍以上の巨体。
だがアレスはそんなことはお構いなく、攻撃を仕掛ける。
ガキンッ!!
アレスの剣はイノシシの牙とぶつかる。
相手はイノシシ、やはり力だけはアレスより上かもしれない。
徐々にアレスはイノシシに力負けし、後退りしていく。
だがアレスはこの状況を冷静に対処し、イノシシの牙を振り払い、一歩下がる。
そして勢いよく剣を振る。
「うおおぉぉぉっ!!!」
スパンッ!!
アレスの剣はイノシシの片方の牙を切り裂く。
するとイノシシは突然雄叫びをあげ、悶えている。
「グオオオォォォッ!!」
どうやら牙が弱点らしい。
それに猟師による遠距離攻撃が効いてきているようだ。
アレスはこの機を逃さず、イノシシの頭に剣を突き刺した。
ブスッ!!
「グオオオォォォッ!!」
剣を突き刺した後、アレスは素早くイノシシから離れる。
イノシシ体を上に反らし、ゆっくりと地面に向かって倒れていく。
「ふぅ……」
アレスは何とかイノシシを倒した。
だがまだ1体に過ぎない。