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5大聖龍とその女達
官能リレー小説 - ファンタジー系

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5大聖龍とその女達 189

だがメイド服を着ているのでよく勘違いされるが、マリーは狩人である。
ナイフも使えなくもないが、できるなら使い慣れた弓を装備したい。
もっともあんなバカみたいに重くて大きい弓、使う気にならないけれど。
もうちょっとマシな弓はないのかな。
そう思いながら次の武器に目を移した瞬間。
マリーの身体に電撃が走った。
そこにあったのは1本の弓。今までの秘蔵の武器と違って怪しい感じはなく、派手さもない。
でも、わかる。マリーには確かに感じられた。
他の武器より明らかに見劣りするはずのその弓から、力強い存在感―――あるはずのない、生き物の生命力を。
「お、お姉ちゃん・・・?」
「ほう?その弓が気になるか。思ったよりいい目を持っとるようじゃのぉ」

明らかに様子のおかしいマリーに、ミラは不安がり。
店主である老人はうれしそうな、感心しているような表情でそうつぶやいた。
だがマリーにはそんな2人のことなど、まったく目に入っていない。
生命力を感じさせる不思議な弓のことで頭がいっぱいだったのだ。
『魔狼の合成弓』。とある山に君臨していた強力なモンスターを材料に作られた弓。
それがマリーを惹きつけてやまない武器の名前だった。
キリッ・・・。キリ、キリ、キリ・・・

マリーはおもむろに弓を手に取ると、矢もない状態のまま弦を引く。
使い慣れていた弓とは違い、弦を引くのには思ったより力が必要だった。
ちょっと力を抜けば、弦が元の位置に戻ってしまいそうだ。
そして限界いっぱいまで引くと・・・弦を引いていた指を放す。
すると弦は勢いよく弾かれ、元の位置に戻る。
矢のない状態で1度だけだったが、それだけで十分この弓のすごさをマリーは理解できた。
これで矢を放てば、今まで仕留められなかった大型の動物(魔物)だって一撃で倒すことができるだろう。
その光景を想像したマリーの顔から、思わず笑みがこぼれた。
そんなマリーの様子に軽く引いている孫娘をよそに、武器屋の店主は心底楽しそうな笑みを浮かべた。

「いい弓じゃろ?その弓にはとある山で主をやっとったジャイアント・ウルフを材料に作ったもんじゃ。
 弓には牙と骨、弦には腱を使っておってな。それで放てばどんな粗悪な矢でも的でも射抜くことができるじゃろう。
 さながら獲物を狩るオオカミのようにな」
「ふふっ・・・それってタカとかワシの間違いなんじゃないか?」
「いいや、オオカミじゃよ。それもどびきりプライドの高い、な」

老人の言葉にマリーはなるほどと柔和な笑みを浮かべてうなずいた。
確かにこの弓からはそんな雰囲気があった。
弓から材料となった魔物のオーラを感じられるとか、そんなオカルトめいたものではない。
それなりの実力がなければ満足に扱えないであろう、扱いづらさのことを言っているのだ。
だが使いこなせれば、その一撃は強力なものとなるだろう。
それこそ、大空を飛ぶ鳥では仕留められない大きな獲物でも。
狩人としても戦士としても、実に魅力的な逸品。
しかしマリーはそんな弓を再びカウンターに戻してしまった。

「・・・?どうした?気に入ったんじゃなかったのか?」
「悪いね、爺さん。買いたいのは山々なんだけど、今は持ち合わせがないんだよ」

そう。マリーはそれを買うだけのお金を持っていなかった。
この世界で金を稼ぐには仕事をしなければならない。
魔物を倒して手に入れたものを売ったり、町や村の依頼をこなしたりして。
しかしアレスたちは途中で旅費を稼がなくてはならないほどの状況でこのクイーンマリアにやってきた。
こんなすごい弓を買う余裕などどこにもなかったのだ。
だからマリーはすっぱりとあきらめようとした・・・のだが。

「このっ・・・バカモンがぁッ!?」

突如店主は烈火のごとく怒り、マリーを怒鳴りつけてきた!

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