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5大聖龍とその女達
官能リレー小説 - ファンタジー系

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5大聖龍とその女達 184

それは白を基調とした、魔術師のローブ。
ふんわりとしたドレスのようなローブは、まるで自ら発光しているかのように淡く輝いている。
生地に織られた糸1本1本にしっかりと魔力が込められているあかしだ。
普通、物体に魔力を込めることはとても難しい。
魔力を込めても、定着せずにすぐに霧散してしまうからだ。
一時的になら防御力や攻撃力を高められるが、汎用性を考えればいい武器や防具を装備させたほうがはるかに簡単で効率的だ。
近年は加工技術も進歩し、魔力を定着させる素材も見つかっているが、高価すぎてそう簡単に手を出せないのが実情である。
しかし。ウルゥの目の前には魔力を定着させたローブが、ありえない値段で売られている。
何かしらの欠陥品、あるいは不良品なのかもしれないと調べてみるが、それらしいものは見当たらない。
考えてみればここはかなり怪しい店だから、一文にもならないガラクタからお宝の一品まで置いてあってもおかしくはない。
ということは。これは正真正銘の高級品・・・?
ウルゥは女の子である。そして魔法使いである。
魔を追及するものであるからこそ、このような魔法のアイテムの価値はよくわかる。
もしこれを装備して戦闘で活躍したりしたら。きっとアレスの中で評価はうなぎのぼり。
しかもデザインもいいから、女の子として、もっと見てもらえるかもしれない。
恋する乙女にとって、それは抗いがたいものだった。
もう一度不備がないかを確認し、さらに値段をチェックする。
人の目を避けるように懐からサイフを取り出し、所持金を確認。・・・購入に問題なし。
ウルゥは素早くローブを回収し、メルディアが正気を取り戻す前にカウンターに走っていった。

(―――ほう。宿主め。まさかあれに手を出すとは・・・。あれが何なのか、知っているのか?)

ウルゥの中にいるもう1人の人物・・・否、魔物は、彼女の中でくつくつと笑っていた。
魔物はまだ生まれて1年も経過していない。
だが寄生する魔物であるだけに、ウルゥが手にした服が何なのかを正確に見抜いていた。
あのローブはどこぞの妖精の手によって作られた魔法のローブだ。
確かにあのローブを装備すれば防御力と魔力を上げられる。
しかし妖精と一口に言ってもいろんな種類が存在する。
ウルゥが買ったローブはその中でもかなり性格の悪い妖精の作ったものだ。
呪いと言うほどではないが、装備者の魔力を引き上げるかわりに『ある仕掛け』が施されていることを、魔物ウルゥは見逃さなかった。
知っていて、あえてそれを放置したのだ。
なぜならそれは、魔物にとってそれなりに都合のいいものだったから。

(くくく・・・いい。実にいいぞ、宿主。その調子で私があの男を落とすのを手伝っておくれ。
 首尾よく運んだ暁には、おまえの大好きな男をたくさん産んでやるから、な・・・♪)

新装備『いたずら妖精のローブ』。その真価を発揮するときはすぐそこにまで迫ってきていた。

――――

ヒョオォォオオォ・・・

ところ変わってこちらはマリー。
彼女は今、王都を囲う城壁の上からアレスを探していた。
身にまとう紫紺の服からすっかり忘れられているが、彼女の本職はメイドではなく狩人―――ハンターだ。
メイド服を着ているのは単に惚れた男(アレス)の気を引きたいがために過ぎない。
そして今。恋のライバルたちより1歩でも優位に立つため。
アレスを探しやすそうな城壁の上にやってきたのである。
マリーは狩りで鍛えられた目をフル稼働させてターゲットを探していた。

「違う・・・違う・・・。あそこでもない・・・。くそっ!アレスのヤツ、いったいどこに隠れやがった!?」

しかし結果はどうにも思わしくない。
獲物の情報はしっかり頭にたたき込んでいる。歩幅や行動パターンも全部読める。
村にいたころはハンターのスキルを最大限に活かし、偶然を装ってさんざんアピールしてきた。
もっとも途中でアレスたちにズルしていることがバレ、抜け駆けできなくなってしまったのだが。
ちょっと話がズレた。
とにかくアレスを探すことに関して、自分以上に詳しい人間はいないとマリーは自負している。
でもここは彼女のテリトリーではない。昨日やっと来たばかりの未知の土地。
慣れない土地という足かせが、彼女のアレスハンターとしての目を曇らせてしまっていたのだ。

「くそっ、他の連中に後れを取るわけにはいかないってのに・・・!」

焦っても不利になるだけだとわかっていても、愚痴をこぼさずにはいられない。
マリーは狩人だ。狙っている獲物を横からかっさらわれるなどガマンできない。
ましてあのおとなしい性格のウルゥに抜け駆けされたのだ。
その動揺は計り知れない。もうゆっくりなんてしていられない。

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