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5大聖龍とその女達
官能リレー小説 - ファンタジー系

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5大聖龍とその女達 183

昨日の襲撃事件のこともあり、スラムの空気は妙にピリピリと張りつめており、いつこっちに向いてくるかわかったものではない。
ビクつくウルゥに対し、メルディアは平然とした様子でスラムを歩く。
ウルゥが何におびえているのか、まったくわからないと言わんばかりのご様子で。

「スラムだからって、そんなに怖がることないじゃないですか。
 ウルゥさんはここに来るまで、ここの住人とは比較にならないような恐ろしいモンスターと戦ってきたでしょう?」
「そ、それとこれとは話が違いますっ!」
「・・・?すみません、何が違うのでしょう?よろしければ教えていただきたいのですが」
「そ、それは後で説明しますっ。今は早く用事を済ませましょうっ!?」

知識欲丸出しでウルゥに聞いてくるメルディア。
スラムの人間と魔物の恐ろしさの違いを理解できないのは、彼女が聖龍の血に連なる者なのだからか。
しかしそれを説明する余裕はウルゥにない。
一刻も早く用事を済ませて安全なところまで帰りたい。
ウルゥははぐれないようにメルディアの手をしっかりと握りながら、スラムの奥へと進んでいった。
そして数分後。2人は路地裏にある地下への階段を進み、目的の店へとたどり着いた。
そこはスラムにあるだけあって、とっても怪しい雰囲気の店だった。
だがメルディアがオススメするだけあって、ガラクタのような商品に交じって明らかに格の違う、宝石と見まごうばかりの価値ある商品が並んでいた。

「うわぁ・・・す、すごい」
「ふふふ・・・すごいでしょう?この店はガラクタも多いですけど、それを補ってあまりある価値ある本や薬などが置いてあるんですよ。
 ちょっと奥まったところにあるのが難点なのですが」

・・・もしかしてそれは表に出せないようなグレー商品、もしくはブラックな売り物があるからではないだろうか?
そう思いつつも口に出すのを何とか我慢し。ウルゥはメルディアとともに店内を物色し始めた。
メルディアはもちろんめずらしい薬の調達。ウルゥは使い古した装備の新調である。

「―――!こ、これは・・・まさか!?」

そんなときだった。メルディアがある1冊の本を見つけて動きを止めた。
その目は驚愕で見開かれ、『なぜこれほどのものがこんなところに売られているのか』と物語っていた。
彼女の目に留まったのは『世界魔法大全』と呼ばれる本。ありとあらゆる魔法について研究・解説された大事典である。
何よりも知を好むメルディアにとっては垂涎の品だろう。
彼女は湧き上がる好奇心を押さえられず、本を手に取って出版された年や内容を確認してみる。
ちなみにこの世界ではようやく紙が一般に普及されたばかりで、本はとても貴重なものなのである。
その中でも魔法に関する書物はレア中のレアである。
何しろ魔法は主に口伝によって継承されてきたものが多く、秘中の秘として公開されてない技術もあるからだ。

「ふむ・・・!ふむふむ・・・なるほど・・・!これは・・・いやぁ、おもしろい!!」
「あ、あの・・・メルディア、さん?」

すっかり自分の世界に入ってしまったメルディアに、ウルゥは声をかけて引き戻そうとする。
しかし何がそんなにおもしろいのか、彼女がこちら側に戻ってくる気配はない。
実質1人ぼっちになってしまったウルゥ。さすがにこんな危険地帯を1人で帰るなんてことができるはずもなく。
メルディアが戻ってくるまでの間、時間をつぶして待つことにした。

(はあ・・・ただ買い物しに来ただけなのに、なんでこんな面倒くさいことになったんでしょう?)

Ans:それはあなたの運が悪いからです。
そもそも彼女は最高の悪運の持ち主とも呼べる人間だった。
アレスをかばって魔物に寄生され、その魔物にすべてを乗っ取られるはずが、アレスの機転で今日まで人間として生きてこれた。
しかも本来の目的は暗黒大帝ゾーマを倒すためだったのに、アレスはそれを後回しにしてまでウルゥを助けようとしている。
アレスに強い好意を抱いている女として、これ以上の幸福なことが他にあるだろうか?
当の本人にその自覚がないのが、まったくもって悔やまれる。
しかし。そんな彼女にもアレスに自分の好意をアピールするチャンスが巡ってきた。
ただし、そのチャンスを恵んでくれたのは神様ではなく、彼女の体内に巣食う魔物によるものだったけど。
ウルゥが店内を物色していると、彼女は衣装コーナーのところでふとその足を止めた。
そこには素人目に見ても美しい1着のローブが、信じられないほどの格安で売られていたのである。

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