5大聖龍とその女達 177
「んふふ、せっかちなヤツだな。
せっかく出てきたんだ、子種の1つくらいごちそうしてくれてからでもいいだろう?」
「っけんな!用がねえならさっさと消え・・・」
ろ・・・と言うより先に、魔物ウルゥの指がアレスの口をふさぐ。
いたずらっぽい笑みを浮かべ、こちらを見下ろすその姿はまさに妖女。
人間ウルゥとは似ても似つかぬ色香の塊だった。
「おいおい、人生の伴侶に向かって冷たすぎやしないか?
せっかく人がいいことを教えてやろうと思ったのに・・・。
それともここでこの身体を完全に私のモノにしないとダメか?」
「・・・っ!」
その言葉にアレスは自分が調子に乗りすぎたことを理解した。
嫌悪感を表に出してもあまり気にしないので口汚くののしってしまうが、相手は魔物なのだ。
その倫理、価値観は人間とは大きく異なる相容れない存在。
アレスを自由にしているのも、自分が彼の子供を産む自信があるからこその寛容であり、その気になればためらわず宿主であるウルゥを殺すことだろう。
アレスは怒りと屈辱で身震いする中、魔物ウルゥは相変わらずの余裕の笑みでアレスの頬を撫でる。
「よしよし、やっと自分の置かれた立場がわかったか。
私のつがいは魅力的だが我が強すぎて少々困る。
さてつがい殿?自分の立場がわかったところで、今度は私のお願いを聞いてもらおうか?
まずさしあたっては・・・」
魔物ウルゥはそう言うと、着ているものを全部脱ぐ。
そしてベッドの上で股を開くとしとどに濡れる秘裂をさらした。
「おまえの子種をいただくため、ココをなめてもらおうか。
愛情をたっぷり込めるように、な?」
ギリッ・・・!
屈辱的な命令にアレスは思わず歯ぎしりする。
しかし今は人命第一。自分のプライドを優先して人間ウルゥを失うわけにはいかない。
アレスは拳から血が流れるほど強く固く握りしめながら、その舌を秘裂に近づけていく。
耐えろ、耐えろと今にも爆発しそうな自分の心を押さえつけながら。
そしてその舌がついにウルゥの秘所に届くその瞬間。
アレスはあまりの屈辱と悔しさから目をつむった。
「〜〜〜っ!・・・?ん、んん?」
だがいつまでたっても舌が愛液に触れた感触が伝わってこない。
どれだけ舌を伸ばしても、むなしく空を切るばかりだ。
不思議に思い、量の瞳を開けてみれば。
アレスの頭は魔物ウルゥによってその頭を押さえられていた。
自分からなめろと言っておいてこの行動・・・。
もしかしてバカにされたのかと再び怒りが湧き上がる。
しかし彼女がアレスを止めたのは、決してそれだけが理由ではなかった。
アレスは死角になって見えなかったが、頭を押さえる魔物ウルゥは開け放たれた宿の窓の向こうを真剣な面持ちで見つめていたのだ。
おかしなものなど何もないその風景にいったい何を見たのか。
彼女はいつもの悪魔のような余裕たっぷりの表情に戻ると、怒り心頭のアレスの髪を引っ張り、無理やりこちらを見上げさせた。
「・・・どういう、つもりだ?」
「いや、からかって悪かったな。あんまりつれないものだからちょっと仕返ししようと思ったのだが。
あんまりイイ顔をするものだから、ついつい調子に乗ってしまったよ」
「テメっ・・・!?」
「まあまあ、そう怒るな。からかったおわびに、いいことを教えてやろう。
もうすぐここに、とんでもなく強力なモンスターがやってくる。
おそらく昨日、魔物の群れをここによこした張本人だろう」
「・・・!」
その言葉にアレスは表情を変えた。
いくら仲間を倒されても一向に引かなかった魔物の集団。
あの行動には強い違和感を感じていたが、やはり裏にはとんでもない大物が潜んでいたか。
アレスは魔物ウルゥへの憎しみも忘れ、ここにやってくるという魔物に意識を向ける。
「ここまでにおってくる瘴気からして、強さだけでなくタチの悪さもかなりのものだろう。
そこでおまえにアドバイスだ。おまえが旅に出てから使っているあの剣。
今回の戦では忘れずに持っていけ。それがあれば有利とまではいかなくても、かなり有利になれるはずだ」
「聖剣エクセリオンが・・・?いや待て。なんでおまえがそんなことを・・・?」
「私にもオトコを選ぶ権利があるという話さ。
今来る魔物は強いが、さすがにそいつの子供は産めそうもないんでね。
まあ見ればすぐにわかるさ」
意味ありげなセリフを並べながら魔物ウルゥは笑う。
まるでこれから起こることを全部知っているかのように。