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5大聖龍とその女達
官能リレー小説 - ファンタジー系

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5大聖龍とその女達 166


メルディアの予言とも冗談ともつかない言葉に、ティルティオラは苦笑する。

「残念ながらそれはないでしょう。そうなればこの王都を守るものは誰もいなくなってしまいますから・・・」
「・・・ふん。あいかわらずおまえは人間に過保護だな。
 思うに、おまえは人間を過小評価しすぎているのではないか?
 人間というのも、存外バカにできんということを、我が夫アレスを通じてよく見ておくのだな」

ティルティオラの答えにつまらなさそうにラムサは言うと、メルディアとともに戦場へと走り出す。
ただ一人残されたティルティオラは、意外そうにポツリと言葉を漏らした。

「私が・・・人間を甘く見ている?まさか、そんな傲慢なことあるはずが・・・」

彼女の心情を表すかのように、部屋一面に描かれた巨大な魔法陣は淡く明滅を繰り返していた。

――――

その頃。アレスたちが入ってきた、クイーンマリアの入り口のある城壁はちょっとしたパニックになっていた。
城兵の言っていた、魔物の襲来に順番待ちをしていた商人・旅人たちが気づいたのだ。

「入れて!オレたちも中に入れてくれーっ!」
「お願いです!この子だけでも中に!」
「落ち着け!今、老人や女子供から順番に入れている!
 それが終わるまで待つんだ!」

検閲していた兵士たちが苦情を訴える旅人たちに説明をして落ち着かせる。
しかし生きるか死ぬかの瀬戸際にいる人間に理屈なんて通用しない。
一部の旅人たちは兵士たちの説明に落ち着くどころか激昂して反論する。

「冗談じゃねえ!魔物たちはすぐそこまで来てるんだぜ!?
 そんな悠長に待ってろってのか!?そんなことしてたら死んじまうぜ!!」
「そうだそうだ!オレたちはこれまでこの王都のために重い荷物をさんざん運んできたんだぜ!?
 オレたちのほうが先に中に入る権利があるんじゃねえのかぁ!?」
「バカを言うな!この非常事態にそんな理屈が通用すると思っているのか!?
 老若男女、弱いものから順番に入れていく!それとも無駄な口論を続けて自分の順番を遅らせるか!?」
「何だとこの野郎!」
「わーん!お母ちゃーん!どこー!?どこに行っちゃったの〜!?」

助かりがたいためにそこかしこで起こるケンカ。
親とはぐれて泣き叫ぶ子供。我先に助かろうとするものに突き飛ばされ、悲鳴を上げる女たち。
現場はちょっとしたパニックになっていた。
治まるどころか、ますます混乱していく城門付近の様子に兵士たちに焦りが見え始めたその時。
兵士に突っかかっていた若い男の顔面に、アレス渾身の蹴りが炸裂した。
それはそれは見事な蹴りを決めたアレスは着地すると、吹っ飛んだ若い男に向かって怒鳴りつけた。

「この非常事態にくだらねえこと吹っかけてんじゃねえっ!!
 あんまりダダこねてると城壁の外に放り出すぞ!?」
「アレス。頭にくる気持ちはわかるが、もう聞こえてないじゃないか?
 そいつ、気を失ってる」
「へ?」
「いいんじゃねえのか、シズク。あんなわがままなヤツ、説得しようとするだけムダってもんだ。
 気絶させて運んだほうがよっぽど手間がかからなくていいと思うぜ、オレは」

呆れるシズクに、マリーが物騒極まりない感想を述べる。
突然現れた悪漢たち(少なくとも周囲にはそう見えた)に、兵士たちは平静を装いながら問いかけた。

「な、何だおまえらは!?」
「え?あ、オレたち?この非常事態に人助けしようって変わり者の集団だよ。
 今アンタらの上司のティルティオラが、兵士と傭兵をかき集めて迎撃準備を整えてる。
 アンタらはそれまでにオレたちと一緒にコイツらを城壁の中に入れろってさ!」
「・・・!てぃ、ティルティオラ様が!?わ、わかった!
 すぐに旅人達を避難させるっ!」

その言葉に兵士たちが反応する。
上司中の上司の言葉に、下っ端兵士たちはあわてて任務を遂行し始めた。
さすがは自らを犠牲に王都を守ろうとする女。
名前を出しただけでものすごい効果だった。
がんばる兵士たちの様子に、エリアがアレスの背後から小声で突っ込む。

「アレスちゃん〜?そんな出まかせ言っていいの〜?
 ティルティオラさん、守ってとは言ったけど、そんな指示出していなかったじゃない〜?」
「いいんだよ。これくらいやんねえと間に合いそうもねえし。
 それにオレが本人だったら同じこと言うと思うぜ?」
「・・・う〜ん」

あながち間違ってなさそうなアレスの答えに、エリアは複雑そうな声を上げる。
本当にこれでいいのか、という気持ちになっているみたいだ。
だがあいにく彼女の悩みに付き合ってやるヒマはない。
魔物の群れがすぐそこまで迫っているのだ。

「よぉし、行くぞおおぉぉぉッ!都を襲おうって命知らずな魔物たちに目に物見せてやれえッ!!」

アレスは仲間たちに号令をかけると、単身魔物の群れに向かって突っ走っていった。

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