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5大聖龍とその女達
官能リレー小説 - ファンタジー系

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5大聖龍とその女達 161

アレスは順番待ちしている商人風の男をつかまえ、聞いてみた。

「王都で何かあったのかい?ずいぶんと物々しい警備だけど・・・」
「アンタ知らないのかい?
 魔物の活動が活発になってきたってことで、王都では魔物が中に入らないように検閲するようになったのさ」
「え、ホントかよ!?めんどくせえな・・・!」

アレスは順番待ちしている人間の多さに、思わずうんざりした声を上げる。
もっともそれは商人のほうも同じ気持ちだったらしく、重い重いため息をついた。

「まったくだよ。魔物が活発化したってことで楽に金儲けできるようになったってのに・・・。
 これじゃあ、いくら時間があっても足りないよ。
 おまけに今日はやけに検閲が厳しいようだし・・・」
「ん?そうなのか?」
「あ、いや何となくだよ、何となく。
 私は何度もここと近くの村を行ったり来たりしてるからね」
「どっちにしても、面倒な話だな」
「まあ、これを受けないと入れてもらえないんだ。中に行きたきゃあきらめるんだね」

まったくもってその通り。
アレスは持ち帰った情報をみなに伝えると、しぶしぶ順番待ちの列に並ぶことにした。
それから待つことおよそ3時間。
日も暮れ、一部の旅人達はあきらめて王都を去る中、ようやくアレスたちの順番が回ってきた。

「次の者!入ってまいれ!」
「へ〜い・・・」

待ち疲れたアレスたちは持ち物に禁制品や怪しいものがないか、持ち物検査を受け。
魔物が化けていないかを調べるために、銀の十字架を身体に押し付けられたりした。
銀は退魔の効果のある金属で、神の祝福を受けたアイテムを魔物が触ると火傷のようなダメージを受けるのだ。
魔物に寄生されているウルゥはちょっと心配だったが、ベースが人間だからか、特に問題なくクリアーできた。
その後も順調に検査を済ませたアレスたちは、最後におかしな質問を受けた。
「では最後の質問だ。おまえらの中に『紋章』を求めてきたものはいるか?」
『―――!?』
「待て。なぜただの人間が『紋章』を知っている!?」
「それは私たち聖龍か、その試練を受けたものでなければできない質問のはずです!」

兵士の質問にアレスたちは驚きを禁じ得なかった。
それは彼らが王都にやってきた、目的そのものだったからだ。
特に聖龍であるラムサとメルディアにはショックが大きかったらしく、つい自分たちが人間でないことを漏らしてしまった。
その瞬間、兵士たちの目に剣呑な光が宿り、アレスたちはあっという間に何本もの剣と槍に取り囲まれた。
いったいこのクイーンマリアで何が起こっているのだろうか―――!?
――――

クイーンマリア王城。地下。
薄暗くじめじめとした地下空間に1人の女性が立っていた。
否。『立っていた』とは正確ではない。
鎖につながれ、立たされていたというのが正しい表現だろう。
しかもそれは1本や2本ではない。
明らかに10本以上はあろうおびただしい数の鎖が天井から垂れ下がり、見目麗しい1人の女性をこの場所に括り付けているのだ。
彼女の名前はティルティオラ。アレスたちが探していた『聖龍の紋章』その人であった。
ティルティオラは鎖に無理やり立たされている状態であるにもかかわらず、眠るように目を閉じている。
その静けさから一瞬死んでいるのではと勘違いするほどに。
しかしそんな静寂も、部屋に飛び込んできた1人の兵士によって破られた。
よほど急いできたのだろうその兵士は、乱れに乱れた呼吸を必死で整えつつ、ティルティリオに用件を告げた。

「てぃ、ティルティオラっ・・・様!
 た、ただいま北側城門よりっ・・・お探しのものと思わしきものたちを発見したとの報告・・・がっ!」
―――ピクっ―――

その言葉に彫刻のように動かなかったティルティオラが反応を示す。
ジャラリと鎖を鳴らしながら、重いいまぶたがゆっくりと開かれていく。

「ついにいらっしゃいましたか・・・。私が思っていたよりずいぶんと早い到着ですね・・・。
 北・・・ということはラムサかメルディアのどちらかでしょうか・・・?
 とにかくまずはこの国の現状を伝えなければ・・・。
 見つけた方々を今すぐこちらへ通してください。
 彼女らは私の古い友人です。くれぐれも無礼のないよう、注意するように」
「かっ・・・かしこまりましたぁッ!!」

縛られた聖龍の指示に、兵士は結局呼吸を整える間もなくその場を後にする。
できればもう少し休ませてやりたかったが、今は一刻一秒を争う事態。
これも国のため、みんなのためとあきらめてもらうより仕方なかった。

「・・・願わくば彼女らの見つけた殿方が、世界を救う勇者であらんことを・・・」

ティルティオラは誰に言うでもなくそうつぶやくと。
再び目を閉じ、友人たちがこの場所にやってくるのを静かに待つことにした。

――――

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