5大聖龍とその女達 148
それによると、最近墓場のほうから怪しい人影が何度も確認されているらしい。
泥棒や山賊の類がそこをうろつくとも考えにくく、暗黒大帝ゾーマの影響でアンデッドが出現したのではないかともっぱらのうわさだ。
確かめようにも、モンスターが相手ではか弱い村人たちではどうすることもできない。
そこで村人たちが資金を出し合ってギルドに依頼した、というわけだ。
「そうだったんですか・・・。それは大変でしたね」
「そうなのよ〜・・・。
このうわさのせいで、夜はみぃんな家に引きこもっちゃってね。
ウチらも商売上がったりだったのよ」
その時のことを思い出したのだろう、宿屋の女将は苦虫を噛み潰したような表情でそう言った。
まぁ困っている村人には悪いが、懐のさみしいアレスたちにとってはありがたいことだ。
宿屋を後にしたアレスたちは、すぐさまギルドに向かった。
「すみませーん。仕事を請けたいんですがー」
「はい、いらっしゃい。・・・おや、見ない顔だね。
旅人さんかね?」
話もそこそこに、アレスたちは出てきた受付のおじいさんから宿屋の女将から聞いた依頼を見せてもらう。
こういった危険を伴う仕事では即受注は命に関わる。
自分の実力と内容、金額などを十二分に見定めた上で請け負うのが、生き残るためのコツだ。
仕事の内容は墓場をうろつく怪しい人影の調査。できればその排除。
報酬は排除成功で500。調査だけなら200。
内容のわりに少々安い。
まぁ村の規模を考えれば仕方のないことだが、アレスたちからすればため息の出る仕事でしかない。
「どうする?この金額じゃあ、やってもすぐ出発ってわけには行かないぜ」
「でも今はこれのせいでめぼしい依頼はないですよ?」
「そうねえ〜。やるしかないんじゃないかしら〜」
「同感だな。どの道この問題を解決せねば、他の仕事も期待できん」
ラムサの答えにシズク・メルディアたち新入りメンバーも大きくうなずく。
どうやらこの仕事を請けることで話は決まったようだ。
アレスはみんなの意思を確認すると、受付の老人に結論を伝えた。
「おじいさん。オレたちこの仕事、請けるよ」
こうしてアレスたちは路銀稼ぎのために、墓地調査の依頼を引き受けたのだった。
――――
そしてその夜。
アレスたちは調査のため、さっそく村の南にある墓地にやってきていた。
普通、こういうときは情報収集や準備を整えてから行くものなのだが。
残り金額が乏しく、早く本来の旅に戻るためにも一行はこうして早々にやってきたというわけである。
「墓場の怪しい人影・・・か。
村のときみたいにモンスターの仕業かな?」