5大聖龍とその女達 147
かと言って旅の資金がなくなったことは重大な問題だ。
仮に今から払い戻しに行ったところで、商人は二束三文くらいしか返してくれないだろう。
厳しい現実を前に、アレスにできたことはそれは深いため息をつくことだけだった。
幸い今日の宿代は前払いで支払っているからいい。
問題はこれからどうやって旅の資金を稼ぐかということだけだった。
「・・・やっぱりギルドで稼ぐしかないか」
しばしの沈黙の後、アレスはあきらめたようにそうつぶやいた。
ギルド。それはこの世界における、職業斡旋所みたいなものだ。
登録さえすれば、草むしりから掃除に配達、果てはモンスター退治や未開拓地域の開発など、あらゆる仕事を紹介してくれる。
もっとも草むしりのような簡単な仕事は、小遣い稼ぎ程度にしかならないのでもっぱら商品の配達などをするのが一般的である。
アレスたちの場合、できるだけ早く大金を稼がなければならないので、自然モンスター退治などの危険な仕事をすることになるだろう。
もっともそんな仕事があれば、の話だが。
アレスの結論にみんなからの異論はなかった。
それしかないとわかっているからこそ、アレスに謝罪しに来たのだろう。
「じゃあ、善は急げだ。いい仕事が取られないうちに早くギルドへ行こう」
こうして一向は村のギルドへ向かうことになった。
ギルドはその性質上、宿屋や酒場など人の集まるところにあることが多い。
アレスたちはまずカウンターでギルドがどこにあるのか、確認する。
「ギルドですか?
ギルドでしたら、右を曲がったところにある商店街にございますが・・・。
あの、もしかしてお仕事をお探しなのですか?」
「え?ええ、まぁ・・・」
急遽お金が必要になったんですと言うことができず、あいまいな返事でお茶を濁すアレス。
しかし女将はそれに気づいたようすはない。
それどころか何やら安心した様子で笑顔を浮かべた。
「よかった・・・!実はここ最近、この村で妙な噂が立っていましてね。
こんな小さな村だから、ギルドに依頼してもやってくれる方がいなくって困ってたんです」
「うわさ・・・?この村で、何かあったんですか?」
金のニオイ・・・否、厄介ごとのニオイを感じたアレスは、さりげなく女将から情報を聞き出そうとした。
ギルドでも情報は仕入れられるが、情報は大いに越したことはない。
すると女将はこの村で起こっているうわさについて、ポツポツと語り始めた。