5大聖龍とその女達 142
だが彼女はエリアにとって恋敵であり、幼馴染であり、仲間の枠を超えた大切な家族だ。
だからこそ、エリアは心を鬼にして尋ねた。
それが今のメルディアと、病魔に冒されたウルゥを天秤にかけた上での結論であった。
「・・・それには、ウルゥちゃんの身体の異変も含まれているんですか〜?」
「・・・ッ!?エリアさん、あなたどこからその情報を・・・!?」
「アレスちゃんから直接〜。
私たちに内緒でウルゥちゃんを助けようとするのは、実にアレスちゃんらしいですけど〜。
こんな大事なことを内緒にするなんて、ちょっとひどすぎますよね〜?
そんなにウルゥちゃんの具合って悪いんですか〜?
もしかして治せない、なんてことはないですよね〜?」
剣呑なエリアの態度に、メルディアはしばし沈黙していたが・・・。
やがて観念したのか、その口を開いた。
「そうでしたか。ご主人様が自分から・・・」
「・・・『ご主人様』?」
「いいでしょう。あなたの質問にお答えします。
知ってのとおり、ご主人様が私のところにやってきたのは、ウルゥさんの身体を治すためです」
メルディアの『ご主人様』発言も気になるところだが、今はウルゥの身体が治るのかが先決だ。
エリアはツッコミたい衝動を抑えて彼女の話に耳を傾けた。
「今のウルゥさんの体内には1匹の魔物が寄生しています。
魔物はウルゥさんの身体を人質に、ご主人様との子供を所望しています」
「こ、子供っ・・・!?」
その言葉にエリアの怒りが憎悪を通り越して殺意に変わる。
当然だ。エリアは物心ついたときから、ずっとアレスを狙っていたのだ。
それを。同じ時間を過ごしてきた幼馴染ならまだしも、汚らわしい魔物に横から掻っ攫われるなど、絶対に会ってはならないことだった。
きっと魔物だけを殺せる状況にあるなら、今すぐにでも殺しに行っていたことだろう。
恋する乙女(?)の怒りはかくも恐ろしきものなのである。