5大聖龍とその女達 138
その頃。
アレスは自らの直感に従い、声の主を探して全力疾走中だった。
と言ってもここは人の立ち入ることのない『迷いの森』。
声の主のいそうな場所など簡単に特定できる。
そしてアレスが向かった先。
それはメルディアの住んでいる湖の小屋であった。
小屋に着いたアレスはエリアたちに不審に思われないよう、小屋の手前で軽く呼吸を整えてドアのノブを回した。
小屋に戻ったアレスを待っていたもの。
それはソファの上で眠るマリーと、何か思いつめた表情のエリアであった。
アレスは場のただならぬ雰囲気を感じ取り、すぐさまエリアに確認した。
自分の予感が外れていることを祈りながら。
「どうした・・・?何か、あったのか?」
「アレス・・・ちゃん?ラムサちゃんとメルディアちゃんはどうしたの?」
「ん?いや、知らないな。2人ともまだ散歩でもしてるんじゃないのか?」
「そう・・・。それならそれで都合がよかったかもしれないわね。
アレスちゃん。あなたに聞きたいことがあるの」
「な、何だよ・・・?いきなり改まって・・・」
有無を言わさないエリアの口調に、アレスはわずかにたじろく。
それは彼女たちに内緒にしていることへの後ろめたさの表われであった。
だがこんなものはまだ序の口。エリアの聞きたいことを聞いたとき。
アレスはショックのあまり、頭が真っ白になることになった。
「正直に答えて。
アレスちゃん、ウルゥちゃんに魔物が取り憑いているってどういうこと?」
「えっ!?」
エリアの告白にアレスを驚愕させるには十分だった。
どうして?何で知っているんだ?どこでバレた?いや、それよりなんて答えればいいんだ?
アレスの頭の中は様々な思考が行きかって、もう何がなんだか分からなくなってしまった。
「な、何言ってんだよ・・・ウルゥに魔物なんか居るわけないじゃないか。ははは」
もうアレスには苦し紛れの言い訳をするのが精一杯だった。
「言い訳しないで!マリーちゃんから聞いたの、ウルゥちゃんの中に魔物が居るかもしれないって。ねぇどうなの、アレスちゃん!?」
(そうか、あの物音はマリーだったか!!だからエリアも)
「答えてアレスちゃん!!辛いかもしれないけど、話してくれれば少しは気が楽になるはずよ」
「・・・」
アレスは考えた、ここでエリアに全てを話していいものかと。
確かにここで話せば気が楽になるかもしれないが、それ以上にエリアに多大なショックを与えてしまうことになる。
そうなるくらいなら、自分の胸の中に締まっておいた方がいい。
エリア、ゴメン!!
「エリア、悪いんだけど今は・・・ッ!?」
アレスが話そうとする前にエリアが突然アレスに抱きついてきた。