5大聖龍とその女達 126
「それはそれ、何も聖龍の試練が交尾だっていうことは無いわ。剣は交尾、書は知識の共有というように、聖龍にもそれぞれ試練の内容は違うわ。
話はこれで終わり。さ、お腹すいたでしょう。
今日は久しぶりの客人だから、ご飯でもご馳走するわ」
咄嗟のメルディアの機転を利かせた嘘だったが、誰もこれが嘘だと思う者はいなかった。
ただ一人、ラムサを除いては。
さらにメルディアがご馳走するということでそれまで怒りの感情を露にしていた3人はすぐさま怒りを忘れ、笑みを零した。
先程まで森を彷徨い、空腹と闘っていたのだから、やはり食欲には誰にも逆らえないのか。
「さっきは助かった、ありがとうメルディア」
「・・・残念でしたね」
「えっ!?」
「今夜、皆が寝静まった頃、外でお待ちしています。
そこで続きを致しましょう・・・ご主人様」
メルディアがアレスの耳元で何か囁いた。
やっと飯にありつけるとあってアレス以外の者は誰もこの様子に気がつかない。
アレスもさっきまでとは打って変わったメルディアの姿に驚きを隠せなかった。
「メ、メルディア?」
「何してんの?早く来なさい。ご飯作ってあげないわよ」
「・・・お、おう?」
メルディアの急な態度にアレスは混乱して、しぶしぶ頷くしかなかった。
それから程なくして、アレスたちはメルディアの作った晩飯にありついた。
干し肉と野菜の煮物、サラダ、ご飯に加えワインととても森の中で食べるような代物ではなかった。
聞くとこの食材の殆どは街に行ったときに見知らぬ人からの貰い物らしい。
たぶん、メルディアの美貌に魅せられて、自分もあわよくばと思った男共が贈ったのだろう。
料理の見た目もさることながら、味も格別だった。
煮込み具合、味付け、盛り付け、全て完璧だ。
(流石、長い間一人で暮らしていただけの事はあるな。どっかの誰かとは大違いだ。)
「何か、言ったか?」
「いえ、何も・・・」
危うくラムサに殺されるところだった。
その後、食事の後はお風呂。
これには女性陣には大好評で、昼間はずっと森を彷徨っていたせいで体中泥だらけだったので、森の中で風呂に入れるとは夢にも思わなかったのだろう。
当然、中にはアレスと一緒に入ろうと誘ってくる者もいたが、そこは丁重に断った。
本当は一緒に入りたかったのだが・・・。
そして気付けば、深夜に。
辺りは皆疲れたのか、ぐっすりと眠っている・・・アレス以外は。
アレスが起きているのは、メルディアとの約束のためだ。
皆が寝静まった後、外で待ち合わせをする事になっている。