5大聖龍とその女達 116
「これはまたずいぶんいいところに住んでるんだなぁ・・・。
おまえの住んでたところとは大違いだな」
「やかましいっ!我だって好き好んであんなところに住んでいたわけではないわっ!
た、ただおきてで仕方なくだな・・・」
「・・・人里離れた洞窟に住むにしたって、住みやすいようにリフォームしてもかまわないんじゃないか?」
アレスはそう言いながら、ラムサが住んでいた試練の山の洞窟を思い出す。
そう、あれはまさに洞窟だった。
それも遭難者や原始人が住んでそうな。
あたりには干し肉などの食糧や、毛皮で作った服などが無造作に捨て置かれていた。
(そう言えば、この剣『エクセリオン』もその辺にあったような・・・。
・・・もしかしてコイツ、家事生活レベルがすっごい低い・・・?)
ズドムッ!
「おっ・・・あっ・・・かっ・・・!?」
そんなことを考えながらラムサを見た瞬間、アレスの足にものすごい激痛が走った。
顔を真っ赤にしたラムサが渾身の力で踏みつけたのだ。
アレスはあまりの痛みに倒れることも悲鳴も上げられずに悶絶する。
そこにラムサが小声でつぶやく。
「よけいな詮索は己の寿命を縮めるぞ・・・?」
「おい!あそこに小屋があるぞ!
あそこに聖龍ってヤツが住んでるんじゃないか?」
何も知らず、湖のほとりにある丸太小屋に盛り上がる他の面々。
ラムサも何食わぬ顔でそれに追従する。
動けないのは足を踏み潰されて悶えるアレスだけである。
「・・・?どしたアレス?急に膝なんかついて」
「い、いや何でもない。何でもないんだ・・・!」
秘密をバラさない代わりに、あとで絶対に仕返ししてやると誓いながら、アレスは不思議がるマリーにそう言い訳するのであった。
そして小屋の前にやってきた一堂は、さっそく新たな聖龍の一族に会うべく、小屋のドアをノックした。
ドンドンっ、
「お〜い、メルディア!聖龍の『剣』ラムサだ!
おまえの力を借りたくてやってきた!
おまえの力を貸してくれ〜!」
だがラムサの呼びかけに、メルディアはまるで反応しない。
迷いの森も魔物でおかしくなっていたし、もしかしてメルディアにも何かあったのでは?
そんな不安がアレスたちの間に広がっていく。
「メルディア!いないのか!?お〜い!」
「お、おい、ラムサ。
もしかして中で倒れているか何かしているんじゃないのか?」
「んん?まぁ、その可能性もなくもないが・・・『書』の一族は昔から本の虫が多いからな。
単に読書中で気づかないのかも。とにかく中に入ってみよう」
「え?あ、おい、ラムサっ!?」
アレスが止めるのも聞かず、いきなりドアを開けて小屋に入るラムサ。
もし中の人間(?)がいきなり自分たちに襲い掛かってきたらどうするつもりなのかと、一同は肝を冷やした。